「間接的な被害」25%に 大規模林野火災 大船渡商議所会員531事業者が回答 キャンセルなど避難対象外の地区でも顕著
令和7年5月28日付 1面

大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)は27日、会員事業所を対象とした大規模林野火災に伴う被害状況調査の速報値を示した。全事業者の36%に当たる531事業者が回答。「間接的な被害がある」と回答したのは25%で、被害額は総額で約2億円となった。避難指示対象外でも被害を挙げる割合が多く、キャンセルなどが相次いだ宿泊、飲食が目立った。今後の課題・影響では、物価高騰や地域全体の人口減少による市場縮小など先行きへの不安が浮かび上がる。(佐藤 壮)
調査は4月21日から実施し、会員1493事業者に対して郵送で調査・回答用紙を配布。5月13日まで回答を求めた。同商議所では引き続き、回答用紙の回収を進める。
回答を寄せた531事業所をみると、地区別の偏りはなかったという。避難指示などによる休業・売り上げの減少など、大規模林野火災で「間接的な被害があった」と答えたのは133事業者(25%)だった。
業種別では、宿泊業が9事業者中5事業者(56%)、飲食業が39事業者中21事業者(54%)と高かった。地区別では、飲食や小売業が多い大船渡町や盛町での割合が目立ったという。
被害の内容では「事業活動の一時停止・短縮による販売額減少」が133事業者中74事業者(56%)。「キャンセルなどによる損失」は60事業者(45%)。被害額は97事業者が記入し、総額は2億70万円で、1事業者平均は207万円。1事業者の最高額は3000万円だった。
被害がなかった事業所も含め、今後の事業経営における課題・影響も聞いた。最も選択が多かったのは「物価高騰(コスト増加)による収益悪化」で258事業者(49%)。次いで「地域全体の人口減少による市場の縮小」が166事業者(31%)、「最低賃金の引き上げによる人件費負担の増大」が97事業者(18%)となり、従業員の確保や雇用維持もそれぞれ10%を超えた。
物価高騰による収益悪化は、ほぼ全ての業種で割合が高かった。人口減少による市場縮小を挙げたのは、飲食、サービス、小売り、医療、福祉、建設の各業種で目立った。
事業継続に向けた必要な支援では「物価高騰に対する補助・支援制度の強化」が最も多く、234事業者(44%)が回答。「地域の人口減少・高齢化対策(移住促進・人材確保等)」は145事業者(27%)、「支援金・義援金など」は122事業者(23%)だった。
米谷会頭は「改めて、間接的な被害が大きいことが分かった。宴会などのキャンセルが多かった。関連して、会員事業者のこれからのことを聞いているが、人口減少による市場の縮小に頭を悩ませ、物価高騰による収益悪化、人件費向上が経営課題として重くのしかかっている」と話す。また、鎮圧宣言後も「訪れていいのか」「大丈夫なのか」といった観光客の自粛など、沈滞ムードが続いた影響も指摘する。
市は物価高騰対策として現在、プレミアム付商品券事業を展開。1セット5000円分の商品券を3500円で販売している。1人1セットまでで、市内人口に相当する3万2500セットを用意しており、積極的な活用による経済活性化に同商議所も期待を込める。
また、6月下旬からは市による「大船渡復興割事業」が行われる。市内の宿泊施設を利用した宿泊者に、1泊当たり上限3000円の助成と、飲食店で使用可能な1000円分のクーポン券を配布する。
利用期間は12月1日(月)のチェックインまでで、宿泊予約が集中しやすい土・日、祝日の各前日と8月前半は対象外とし、すでに予約を済ませた人や、市内在住者は利用できないといった条件を設ける方針。クーポンは500円券2枚とし、幅広い分野の消費を促す。
商議所などは3月、赤崎町や三陸町綾里など大規模林野火災で避難指示が出された地域に構える会員事業所を対象に被害状況の確認調査を実施。143事業所が回答し、建物損壊など直接的な被害は27事業所(19%)で、売り上げ減少など間接的な被害は41事業所(29%)だった。