急潮被害乗り越え操業再開 吉浜漁協の大鮑定置網 9カ月ぶり、まずは1カ統(別写真あり)
令和7年5月29日付 7面

大船渡市三陸町吉浜の吉浜漁業協同組合(寺澤泰樹組合長)は28日朝、吉浜湾内の定置網漁場で今季初の網起こしを行った。昨年8月に発生した急潮によって、経営する2カ統の定置網や資材などが流される被害を受けながらも、まずは1カ統を復旧させ、この日は約9カ月ぶりの操業となった。市魚市場に水揚げした乗組員らは、仕事ができる喜びを胸に懸命に作業にあたりながら、さらなる漁況充実に力を込めた。残る1カ統の復旧作業も今後、本格化する。(菅野弘大)
午前5時前、吉浜の根白漁港に定置網漁船の乗組員らが集まった。久しぶりの操業に向けて第二十八、第三十八各吉浜丸に乗り込み、同漁協が経営する漁場の一つ、大鮑漁場に向けて出港。午後0時30分すぎに大船渡町の市魚市場岸壁に接岸し、水揚げ作業を行った。岸壁では魚種の選別を行う乗組員や魚市場職員、タンクを載せて行き交うフォークリフトの慌ただしさが広がった。
この日は、メジマグロやサバ、マイワシなどを中心に約13㌧のまとまった量を水揚げ。選別作業にあたった同漁場の佐藤淳大謀(56)は「まずは漁が再開できて一安心というところ。初日が大漁になって良かった。今後も安全第一でいつも通り漁に臨みたい」と話した。
急潮は、海の中で発生する強い流れのことを指し、黒潮続流の北偏をはじめ、台風、低気圧の通過も発生原因の一つとされる。気仙を含む本県沿岸でも、各地の定置網施設で被害が確認されており、釜石市の県水産技術センターでは、令和5年から急潮情報を発表して注意喚起を行う。
同漁協では昨年8月、急潮によって大鮑、横沼両漁場の定置網やそれを支える資材が流される被害を受けた。基礎と網をつなぐロープが切れて大きく絡まり、資材不足などで補修ができず、昨季は夏以降の操業を休止せざるを得ない状況となった。
組合経営の柱である定置網漁業の休止は、大きな打撃となった。同漁協では、乗組員の雇用を守りつつ、各種支援も活用しながら網の補修や新しい資材の確保などの復旧作業に奔走。6月頭をめどに、まずは1カ統の再開を目指して取り組み、今月下旬に4、5日間をかけて網を入れ、同日の操業再開にこぎ着けた。
復旧費は2カ統合わせて最低1億5000万円を見込む。残る横沼漁場も、復旧を目指して一から基礎となる土俵作りなどの作業に取り組んでいく。
寺澤組合長(75)は「定置網は組合経営の要であり、定置網なくして経営は語れないほど重要なもの。さまざまな支援を受けながら、復旧に向けて取り組んできて、まずは1カ統だが、水揚げができてほっとしている。もう一山残っているが、横沼漁場もいち早く復旧させるべく、作業に傾注していく」と力を込め、「皆さまからの協力と支援がありがたかった」と感謝を述べた。