砂防・治山応急工事が本格化 大規模林野火災に伴う県事業 土砂災害警戒区域の29カ所で(別写真あり)

▲ 沢を横断する形で石材が入った袋を重機で積み上げる応急工事を実施=三陸町綾里

 大船渡市大規模林野火災で延焼した三陸町綾里や赤崎町の土砂災害警戒区域で、大雨時に土石流の発生増加が懸念される中、県による応急工事が本格化している。沢の上流部で焼損が激しい地域など計29カ所で、受注した地元建設業者が石材を詰めたものや大型土のうを積み、梅雨入り前の6月上旬には完了したい考え。県は応急工事について、下流域にある住宅まで土石流が到達するまでの〝時間確保〟とし、地域住民に引き続き土砂災害への警戒や早めの避難行動を呼びかける。(佐藤 壮)

 

土石流発生時の〝時間確保〟 早期避難の重要性変わらず

 

 三陸町綾里の田浜地域で28日、砂防事業の応急工事が報道陣に公開された。林道沿いに位置する沢で、土石流が発生した場合、下流側に暮らす約10世帯への影響が懸念される。沢の上流部に土砂の供給源があり、焼損範囲に含まれているという。
 工事現場では、重機を用いて、ポリエステル製で網目状の袋に石材を詰めたものを、沢を横断する形で積み上げた。袋には1㌧分の石材が入り、107個使用する見込み。幅23㍍にわたり、2㍍以上の高さを確保する。29日には完了する。
 県によると、林野火災後の山地は、土砂災害が発生しやすいとされる。地表部の土砂や降り積もった灰によって、降雨が地下浸透しにくい状況が続いている。表面水が流れ落ちる際に土砂も流すことで、下流域で土砂流や土石流になる可能性が通常よりも高まる。
 大規模林野火災の延焼面積3370㌶の中には、約70カ所の土砂災害警戒区域がある。住家がある地域の近くも急峻な地形で沢が多く、土砂災害をはじめ2次被害への不安が高まっている。
 県は、住家の立地や現地の地形、砂防施設が設置されていない状況などを判断し、綾里と赤崎の計29カ所で応急工事を実施。このうち、比較的住家に近い20カ所が砂防事業で主に石材を入れた袋を並べる工事で、治山事業では、沢の上流部など9カ所で大型土のうを積み上げるという。
 各現場とも、石材が入った袋の積み上げでは、土石流そのものを食い止める機能は小さい。県大船渡土木センター河川港湾課の鈴木嘉朗課長は「狙っている効果は、万が一、土石流が起こった場合、勢いを弱め、下流に土石流が到達するまでのスピードを落とし、住民の皆さんが避難をする十分な時間を確保すること。人命確保には、住民の皆さんの警戒、避難が第一」と語り、理解を求める。
 降水量が増える梅雨時期が近づく中、県は6月上旬には完了したい考え。土のうなどは山地復旧が済み、植生が回復して土砂災害の恐れが無くなるまでは置き続けるとし、明確な撤去時期は示していない。
 29カ所の施工は、県建設業協会大船渡支部に所属する9事業者が請け負う。県と同協会が締結する災害協定に基づき、県が施工に関する要請書を出し、協会側で業者を設定。地域に精通した事業者が関わることで、迅速な施工につなげる。各事業者とも前向きに対応し、袋や石材などの資材手配もスムーズに進んだという。