地元産の魅力味わって 市内小中学校で「OEC(おいしい)給食」提供開始(別写真あり)
令和7年5月30日付 7面

大船渡市内の小中学校で今月から、学校給食を通じた地産地消の推進や地元の魅力を伝える「OEC(おいしい)給食」が提供されている。市内3カ所の給食センターまたは共同調理場と生産者、事業者らが連携し、地元産食材や市内で加工された食品を中心とした特別メニューを児童、生徒らに定期的に提供。29日は大船渡北小学校(金野晋校長、児童108人)で関係者らが参加してのお披露目会が開かれ、児童らが地元産のおいしさや魅力を味わいながら、古里の素晴らしさを知るきっかけとした。(菅野弘大)
市教委では、給食を通じて地元産食材の魅力や地産地消の意義を伝え、一層の食育推進を図るとともに、児童、生徒に食材や地元事業者の技術力など、大船渡の魅力を再発見してもらう狙いも込めて「OEC(おいしい)地元発見デー」と銘打った事業を展開。今月から、長期休業がある月を除く計8回、「OEC給食の日」を設定し、提供日にはオンラインや動画、各種資料を活用して、事業者の思いや地元産の良さを伝えることで、郷土への愛着も深める機会とする。市のふるさと納税基金を活用することで、通常よりも1食当たりの価格が高いメニューの提供を実現している。
今月から提供が始まっており、同日は同校の6年生教室でお披露目会を開催。児童17人と教職員に加え、渕上清市長や食材提供した大船渡町のサンコー食品㈱(小濱健代表取締役)の関係者らも参加し、児童らと会食した。
この日のメニューは▽みなと町のOEC(シー)フードカレー▽食べて応援!綾里ワカメのサラダ▽松ぼっくりヨーグルトあえ──の3品。渕上市長は「食べ物を大切にすること、そして給食に関わる人たちへの感謝を忘れずに、大船渡のおいしさを楽しんで」とあいさつした。
シーフードカレーは、同社が取り扱うイカをはじめ、大船渡町の太産商事㈱大船渡店のホタテ、隠し味には、三陸町綾里の野村海産㈱が製造する、肝を使ったしょうゆ製品の「あわびの精」を使用。「水産のまち」を掲げる大船渡の魚介をふんだんに詰め込んだ一品をほおばった児童らは、各食材の味や食感を楽しみながら「おいしい」と笑顔を見せた。大規模林野火災で収穫、加工が遅れるなどの影響があった綾里産ワカメのサラダも好評で、児童らがおかわりの列を作るほど人気を集めた。
完食した舩越優輝さん(6年)は「全部おいしくて、特にイカが食べやすかった。直接伝える場面は少ないけど、給食に関わる人たちに感謝して食べたい」と話した。
会食中には、サンコー食品㈱でインターンシップ経験のある小國瑞奈さん(24)=東京都=と、同社生産管理部の新沼匠さん(22)が動画などを使って提供食材のイカについて紹介。OEC事業に込められた思いも伝えた小國さんは「皆さんが将来を考える時に、この給食を食べた思い出が地元に思いをはせるきっかけになればいい」と呼びかけた。
同社は、子どもたちに地元の食材や企業への関心を高めてもらおうと令和4年度から行われている「地元給食バトンリレープロジェクト」の発起人となっている。小濱代表取締役(52)は「子どもたちに食材や商品を提供できる仲間が増えていけば」とOEC事業の広がりに期待を込めた。
同校給食共同調理場の佐藤美香栄養士(53)は「地元食材に理解を深め、地域への関心や感謝の気持ちを育むきっかけにできれば。子どもたちには、こうした取り組みを通して、生まれ育った大船渡を誇りに思ってほしい」と願っていた。