被災住宅地の再利用へ前進 大規模林野火災 公費解体の作業着手 年内に全体事業完了へ がれき推定量は6700㌧(別写真あり)

▲ 公費解体の現場作業が始まった三陸町綾里の港地域

 大船渡市大規模林野火災で被災した建物の「公費解体」が30日、三陸町綾里と赤崎町で始まった。住家敷地内に重機が入り、焼損部材の分別などが進められた。トラックなど大型車両が入るには狭い道路が多く、当面は手探りの状況も。所有者から申請があった約200棟が対象で、がれきの推定量は約6700㌧。今後はがれきの仮置き場を市内に設け、分別を進めながら市内外で処理し、全体の事業完了は12月末を見据える。(佐藤 壮)

 同日着手したのは、三陸町綾里の港地域と赤崎町の外口地域。被災地全体で小さな小屋や屋外トイレなどを含めて約200件の申請があった中、港と外口ではそれぞれ約20件の解体・撤去を見込んでいる。
 港地域では、金属くずを重機で動かし、焼け残った部材の分別を進めた。細かく割れた屋根瓦などは、作業員が手作業で集めた。
 現場を見守った関係者からは「港は、比較的条件が良い」といった声も。地域によっては大型車両が入りにくい場所も多く、現段階で作業スピードは読みにくいという。市は全体事業は年内完了を目指す一方、着手した地域ごとの完了見通しなどは明らかにしていない。
 公費解体作業は、市が県産業資源循環協会(濱田博会長)に依頼。沿岸支部(新沼学支部長)に所属する大船渡市内の約10事業者が作業にあたるという。新沼支部長は「災害廃棄物処理はわれわれの大きな使命の一つ。研修も重ねてきた。一日でも早く撤去を完了し、被災者の方々に生活再建への一歩を踏み出してもらえれば」と力を込める。
 所有者の希望に応じて行う公費解体は、生活環境保全や二次災害の防止などが目的。全壊に関しては国の災害等廃棄物処理事業補助金を活用し、半壊家屋などに関しては市の独自支援策として行う。
 申請は4月12日にスタート。同28日から現地立ち会いに入り、市と業者、建物所有者らが境界や撤去する部材などを確認した。解体撤去作業は、現場が点在している中、申請受け付け順ではなく、周辺環境への影響や作業条件等を考慮して実施する。
 家財道具や家電のうち、災害で損傷するなどして不要なものとして処分せざるを得ないものは、公費解体と合わせて市が撤去・処分する。被災して機能しない浄化槽・便槽も被災家屋等と一体的に解体・撤去する。
 港、外口地域で作業のめどがついた段階で、他地域にも着手する方針。解体・撤去した部材のうち、分別が難しい混合廃棄物は、奥州市内の処理施設で埋め立て処分する。基礎部分の撤去に伴うコンクリートがらは、大船渡市内の施設に運び、リサイクル活用する。
 可燃物は釜石市の岩手沿岸南部クリーンセンターに、廃木材は太平洋セメント大船渡工場に処理を依頼する計画。基本的には解体・撤去現場からトラックで運ぶが、今後作業が進む中で仮置き場も設けることにしている。
 作業を終えた後、再び所有者らが入っての立ち会いを経て、現場ごとに事業完了通知を市が交付。これにより、敷地内での住宅再建や倉庫整備など土地の再利用が可能となる。
 現場での作業により、被災地の景観も大きく変化する。被災者だけでなく、近隣に暮らす地域住民もさまざまな思いを抱きながら見守る。
 市の新沼優市民環境課長は「現場が動くことで、目に見える形で復旧・復興が進むことになる。着実に前に進んでいることも実感してもらえれば」と話す。合わせて、大型車両の通行増加が予想される中、付近を通るドライバーらへ注意も呼びかける。