被害全容把握へ現地踏査 大規模林野火災で延焼の人工林中心に 指標木「激」「大」「中」「小」に判別(別写真あり)

▲ 延焼した森林で行われている被害判定調査

 大船渡市大規模林野火災で延焼した森林の被害把握に向けた県の現地調査が、三陸町綾里などで行われている。衛星画像で緑色の葉が確認できる区域の人工林を中心に、県や林野庁三陸中部森林管理署の職員が入り、所有者が把握できるよう地番ごとに指標木を定め、被害具合を判定する地道な作業が続く。今後の復旧に向けた意向調査や、市が立ち上げた林地再生協議会で策定が進む復旧計画などに生かされる。(佐藤 壮)


 被害調査は、5月8日に始まった。同29日は、全体調査として大規模な活動が行われ、県内各地の農林振興センター職員や三陸中部森林管理署の職員45人が集まり、13班に分かれて現地踏査による被害判定を行った。
 三陸町綾里石浜地内でスギの人工林が広がる場所では、地番ごとに指標木を定め、幹部分の火災による焼損状況を確認。2㍍を超える延焼は「大」、2㍍以下は「中」、地表から30㌢程度は「小」とする。
 判定結果は、位置情報や現地写真も添えて市に報告。一つの地番の中でも被害具合が異なる状況も見られるが、被害程度が大きい木を指標木にするという。
 県は4月から、衛星画像による判別も進めてきた。画像で先端まで黒く焦げている部分の被害は「激」とし、主に画像で緑色が残り、立木の状況が分からない区域で現地踏査に入る。今月も、行政機関ごとの通常業務の合間を縫って、調査を行うことにしている。
 こうした調査は、釜石市内で発生した林野火災時などの対応を参考としている。一般的に「小」は枯れない傾向が見られるほか、「中」以上は4~5年後に枯れ始めることも考えられ、経過観察の必要があるという。「激」は倒木の危険があり、早期の対応が必要とされる。
 被害調査は10月までの完了を目指している。県沿岸広域振興局農林部の菊池伸裕技術特命参事は「衛星画像では判別できない区域に職員が入り、被害の全貌を明らかにしていく。みんなで協力し、なるべく早めに現地の状況をまとめる。これだけの延焼範囲は経験がないが、全て燃えているわけでなく、頑張って生きようとしている木もある。きちんと調査をし、今後の事業導入につなげたい」と話す。
 大規模林野火災に伴い市が設置した林地再生対策協議会の第1回会合は22日、市役所で開かれた。被災森林面積は調査中ながら、2月19日に三陸町綾里で出火した火災分も含め約3400㌶で、森林復旧補助事業の対象となる人工林は約1700㌶に及ぶ。
 令和10年度までを期間とする森林災害復旧の計画概要書によると、被害木の整理(7年度~9年度)は125㌶で、事業費は4億4163万円。跡地造林(8年度~10年度)は135㌶で、事業費は5億1800万円となっている。被災人工林と造林計画の面積に大きな開きがあり、市は今後、作業規模拡大や計画期間延長を目指す。
 数百人以上と見込まれる私有林所有者に対し、復旧を進めるかなどの意向調査を行う。復旧計画の策定や国への交付申請などを経て、年度内の復旧事業着手を見据える。所有者に対し、費用負担は求めないが、復旧面積が増えれば市側の財源確保が課題になる。
 次回会合は7月の開催を見込み、森林整備の方向性や整備区域などを協議する。協議会の中に連絡会も設け、火災状況調査や森林所有者の特定、意向把握などに関する検討を進める。
 同協議会で示した今後のスケジュールは別掲。