「近日中に災対本部廃止」 大規模林野火災避難所閉鎖受け 市議会全協で市長説明
令和7年6月3日付 1面

大船渡市議会全員協議会が2日に開かれ、大規模林野火災を受けて2月26日に市が立ち上げた災害対策本部について、渕上清市長は近日中に廃止する見込みを示した。5月30日に全避難所が閉鎖した状況などを「ひと区切り」とし、今後は住宅再建やなりわい再生などに向けて庁内横断的な体制を整える。
冒頭、渕上市長が大規模林野火災の対応状況を説明。消防覚知直後の2月26日午後1時33分に、応急対応に当たる災害対策本部を設置し、関係機関や団体の協力を得ながら被害調査や被災者生活支援として生活必需品の供給、避難所の運営などに注力してきた足跡を挙げた。
市内2カ所の建設型をはじめ応急仮設住宅への入居が進み、先月24日に三陸町綾里の綾姫ホール、同30日には立根町の県立福祉の里センターに設置していた避難所の閉鎖にも言及。避難所以外ですごしていた市民の暮らしの再建進行にも触れ、「応急対策にひと区切りをつけるめどが立ちつつあり、近日中に災害対策本部を廃止する」と述べた。
さらに「一日も早い本格復旧・復興と被災者等の支援に向け、これまでにも増して強力かつきめ細かい施策を推し進めるため、庁内横断的な体制を整えるべく準備にあたる。復興に向けた新たなステージに着実に歩みを進めるべく、スピード感を持って生活再建、なりわいの再生に向けて被災者に寄り添って対応したい」と語り、理解と協力を求めた。
全員協議会の協議事項は、令和8年度予算編成を前にした対国・対県要望の1点。市が抱える諸課題の解決に向けた予算配分や事業実施を求めるもの。当局は、対国要望として13項目、対県要望は16項目を示した。
対国要望のうち、新規は「大規模林野火災に係る農林復旧支援策の拡充等」の1項目。森林災害復旧事業は激甚災害指定を受けて実施するが、延焼範囲や地域が広大・急峻であることから、既存制度下の4年間での事業完了は困難な状況が見込まれる。事業を超える期間の延長など柔軟な運用を図るとともに、必要な財政支援策を訴える方針を掲げる。
同事業は国費や特別交付税措置を受け、市の実質負担は1割。一方、年間100㌶を整備した場合、全体事業費概算は7億3700万円で、市負担は7300万円に上る。
延焼区域の人工林が1700㌶に及ぶ中、復旧を進める中で費用負担が大きな課題となる。議員からは、より具体的な実情や復旧の必要性を示しながら、国に訴えていくよう求める意見が出た。
県要望でも大規模林野火災の施策拡充を訴え、さらに「幼児教育・保育の無償化に係る対象拡大」を新規に盛り込む方針。一方、昨年度要望した吉浜海岸の復旧整備は、県事業で遊泳想定区域内の海中がれきが撤去されたことを受け、本年度は見送る。海水浴場は開設を目指す。
市側は、議員意見や大規模林野火災の施策状況などを踏まえ、引き続き調整を重ねる。対国要望は7月に関係機関ごとに行うほか、対県要望は8月29日(金)を計画している。