魅力や特色づくり求める 今後の県立高校巡り意見交換 気仙などの代表者ら 県教委が地域検討会議 大船渡で

▲ 県立高校の今後のあり方について意見を交わした地域検討会議

 県教育委員会による「今後の県立高校に関する地域検討会議」の沿岸南部地区初回会合は4日、大船渡市三陸町越喜来の三陸公民館で開かれた。気仙3市町と釜石市、大槌町の代表者らが、今後の高校、学科の配置などについて意見を交わした。出席者らは地域と高校の関係性を強調しながら、魅力や特色ある学校づくり、生徒の学びに応じた学習環境、通学手段の確保などを求めた。
 県教委は現在、令和8~17年度の10年間を期間とする第3期県立高校再編計画の検討を進めている。この土台として、今年4月には「県立高等学校教育の在り方~長期ビジョン~」を策定した。
 検討会議は、同ビジョンを踏まえて各地区における高校のあるべき姿などについて地域の代表者らと意見を交わし、同計画の検討に生かそうと県内8地区で開催。沿岸南部地区会場には、対象5市町の副市長や副町長、教育長、PTA、産業団体関係者ら22人が出席した。
 県教委の駒込武志教育次長兼学校教育室長は「高校再編計画は、単に統合や学校の配置にとどまらず、全ての生徒が充実した教育を受けられる環境をつくるためのもの。これからの高校のあるべき姿、地域の実情に応じた高校や学科の配置について、多角的な意見をいただきたい」とあいさつ。長期ビジョンの概要説明に続き、意見交換を行った。
 長期ビジョンでは、高校教育の基本的な考え方として、▽持続可能な社会の創り手となる人材の育成▽高校の多様化に対応、各自の希望する進路の実現▽教育の質の保証、教育の機会の保障▽地域や地域産業を担う人材の育成▽大学進学率の向上や専門的知識を持つ人材の育成──の5本柱を掲げる。さらに、普通高校や専門高校、定時制・通信制高校などの学びの在り方、学びの環境整備、高校教育の充実に向けた方策などを示した。
 県内の中学校卒業予定者数は、6年3月末時点の9954人に対し、20年には5798人にまで減ると予測。減少生徒数は、現在の1学級40人換算で104学級分に当たるという。沿岸南部地区は6年の660人から20年には377人と、4割余り減少する見通し。
 同地区には現在、高田、大船渡、大船渡東、住田、釜石、釜石商工、大槌の全日制7校、大船渡と釜石の定時制2校がある。エリア内の5市町すべてに1校以上の高校が配置されている。
 出席者らは一人ずつ発言し、高校と地域との結びつき、国際交流や生徒個々の興味・関心を探究する学び、教育コーディネーターの存在といった各校の特色などを挙げ、地元高校の必要性を強調。そのうえで、「さらなる高校の魅力化、改変に取り組む必要がある」「生徒自身がやりたいことをできる特色を出しては」「授業そのものに特色ある魅力が必要」などと、地域資源や専門性の活用、医科大学などへの進学・スポーツ等に特化したクラスの設置といった魅力づくりを求めた。
 気仙地域における高校のあり方には、「全ての専門学科があるため、地区内での進学者の流出が少ない。専門学科を削らず、中学生が流出しない工夫をしてほしい」「気仙で地域発展のために頑張っている人や企業、資源を生かした学校づくりを」などの声が寄せられた。
 また、人口減少が進む中で、地域産業を担う人材の育成、生徒が進学で離れても地元に戻りたいと思えるような郷土愛を育む学習機会の提案も。高校授業料の無償化も踏まえ、県内陸部や隣接する宮城県内の高校、私立校とどう差別化を図っていくか、希望する高校で学べるための通学手段の確保・支援も話題に上った。
 県教委は8月上旬をめどに、新たな再編計画の素案を公表予定。同月中旬から9月に見込む第2回会議では、素案内容に関する意見交換を計画している。