景況〝トリプルパンチ〟に コロナ禍の落ち込み・物価高騰・大規模林野火災 商議所会員事業所調査で浮き彫り

 大船渡市と大船渡商工会議所が4~5月に実施した同商議所会員事業所対象のアンケート調査で、コロナ禍前との売り上げ比較で「減少した」と回答した割合が66・4%に上り、昨年12月~今年1月実施時よりも4ポイント増加した。物価高騰で「影響を受けている」と回答したのは今回も8割を超え、さらに3割以上が大規模林野火災の影響として避難指示に伴う事業活動への影響による売り上げの減少を挙げ〝トリプルパンチ〟の苦境が浮き彫りになった。(佐藤 壮)

 

 調査はコロナ禍や物価高騰などの影響が幅広い業種に及ぶ中、令和2年度から定期的に行っており、今回で通算20回目となった。前年度から物価高騰の影響を重点的に聞く内容としている。
 会議所の会員事業所から業種バランスを考慮し、600事業所を選定。328件の回答があり、回収率は54・7%だった。
 調査基準日を3月末とし、コロナ禍前年の平成31年3月の売り上げ状況を100とした場合の変化に関する質問=別掲図参照=では「減少」が66・4%で、前回調査から4ポイント増加した。「増加した」は12・8%で、前回調査比で4・1ポイント減った。
 減少幅は「30%以上減」が17・3%で最も多く、前回から5・6ポイント上昇。「50%以上」は14・0%、「20%以上」は11・0%、「5%以上」は9・5%。「10%以上」は7・6%、「15%以上」は7・0%となった。
 「50%以上減」と回答した割合を業種別にみると、宿泊業が37・5%に達し、建設業も32・5%となった。一方で「増加した」と回答した割合は、医療・福祉が50%、食料品製造業と卸売業が各30%となった。
 物価高騰の質問=同=で「影響を受けている」と答えたのは81・5%で、前回比1・3ポイント増。業種別では、食料品製造業と宿泊業がいずれも100%。運輸業が92・9%、飲食業が92%と高い。
 物価高騰などに伴うコスト増加分に対する価格転嫁では「全く転嫁できていない」が25・6%で、前回調査時から10・7ポイント増。「転嫁できたのは半分に満たない」は31・1%で、「半分以上は転嫁できている」は25・6%となった。
 必要とされる支援策(複数回答可)では「エネルギー(燃料・電気・ガス)価格高騰に対する支援」が57%。「売り上げ減少事業者への補助金・給付金」は50・3%と、これまででも高かった。「原材料や資材高騰に対する支援」は39・6%、「賃金の引き上げに対する支援」は33・5%だった。
 今回は大規模林野火災に関する質問も設けた=同、複数回答可。2月26日に発生し、全地域の避難指示解除は3月10日まで要した中、避難指示に伴う事業活動への影響による売り上げ減少を挙げたのは30・8%に上った。宿泊客・来店客のキャンセルは8・5%、休業による休職手当てなどの支給が5・5%、東日本大震災との二重被災3・7%と続いた。
 4~5月にかけて大船渡商工会議所が独自に実施した調査と同様、直接的な被害だけでなく、間接的な被害の深刻さも浮き彫りとなった。
 伊勢徳雄商工企業課長は「新型コロナウイルス5類以降後も市内経済が回復しない中で物価高騰に苦しみ、さらに大規模林野火災による影響と〝トリプルパンチ〟の状況が見えている。現場の生の声を受け止めながら、どういった支援が必要か見定めたい」と話す。
 市は物価高騰対策として、現在、プレミアム付商品券事業を展開。1セット5000円分の商品券を3500円で16日(月)まで販売している。1人1セットで、市内人口に相当する3万2500セットを用意している。
 また、林野火災の影響で落ち込んだ宿泊需要の回復を目指し、今月下旬には市による「大船渡復興割事業」が始まる。市内の宿泊施設を利用した宿泊者に、1泊当たり上限3000円の助成と、飲食店で使用可能な1000円分のクーポン券を配布する。