待望の今季ウニ漁が解禁 火災で被災の綾里地区 水産業復興の足がかりに(別写真あり)
令和7年6月10日付 7面

大船渡市大規模林野火災で被害を受けた三陸町綾里で9日、今季のウニ漁が解禁された。火災の影響で漁具や倉庫を失った漁業者も多い中、各種支援などを活用して漁具を調達し、例年より約1カ月遅れでの口開け。各漁港からは、船を操作しながらウニを狙う漁業者の姿が見られ、漁業や養殖業をはじめとする水産業の本格復興に向けた足がかりとなる活気に満ちあふれた。(菅野弘大)
今回の大規模林野火災で被災した赤崎、綾里両地区では、ウニをはじめとした漁具やそれを保管している倉庫が燃えるなど、多くの漁業者が被害を受けた。市では、ウニ漁の設備復旧に向けて独自に補助を計上し、耐用年数の短い消耗品は除いて、プレハブ倉庫やウニむき作業用のテント、小型の電動船外機などを3分の2の補助率で支援する策を打ち出した。
今季のウニ漁について、綾里漁協では漁具焼失の状況を考慮して5月中の開口は見送り、漁具の調達期間に充てることとした。赤崎町に本所を構える市漁協も、被災した漁業者の要望を踏まえて漁具を発注し、5月後半の湾外での漁に間に合わせる対応をとった。
5月下旬にウニ用の箱メガネやかご、さおなどの漁具が届き、綾里漁協では同27日から被災漁業者に支給を始めた。6月からの漁開始に向け準備を進め、例年より約1カ月遅れで初開口にこぎ着けた。
漁業者にとって待望の漁解禁となった9日は、午前5時30分から一斉に漁をスタート。焼けた木々が残る小路漁港付近の磯場では、約20隻が操業する様子が見られ、穏やかな海の上でカギさおやタモ網を器用に操って次々とウニを捕獲していった。現場では「水はにごりがなくて良い」「実入りはこれからに期待」といった声が聞かれた。
帰港後は各地で殻むき作業が行われた。火災の影響で自宅や作業場を失い、漁港内にテントを立てて作業にあたる漁業者もおり、同漁港で作業した50代男性は「家を再建するまで安心はできないが、いまは前向きに漁業に取り組んでいくしかない」と手を動かした。
集荷場となっている綾里漁港内の同漁協水産物荷捌施設には、同11時ごろから続々とむき身が持ち込まれ、収穫の手応えや品質を確かめ合う漁業者らの活気に包まれた。水揚げ数量は658・9㌔で、昨年の初日の約2・6倍となった。
火災で漁具と倉庫を失った道下翔さん(24)=平舘地域=は、支援や知人から譲り受けることで漁具を調達。「漁況はこれからだが、ようやく始まったという思い。道具がないと漁に出られず、支援がありがたかった。漁業で地域を盛り上げるために頑張りたい」とやる気をみなぎらせた。
同漁協理事の三浦秀悦さん(65)=黒土田地域=は、自宅に隣接する土地に再建した漁協倉庫が全焼。「おかげさまで、ウニ漁に使う漁業資材を間に合わせてもらい、今季の漁にこぎ着けた。また元の漁ができるように、復興が進んでいけば」と期待を込めた。