景観変化に学び多く 潮風トレイル通行再開区間  綾里崎コース 静かに伝える大火の現実 ハイカーには注意と情報求める(動画、別写真あり)

▲ れたアカマツの下を通る場所も=綾里崎コース

 みちのく潮風トレイルルートのうち、大船渡市大規模林野火災の影響を受けた三陸町綾里に位置する綾里崎コースは、火災前から大きく景観が変化した。9日から通行可能となった区間を巡ると、改めて大火の恐ろしさを思い知らされる。周囲の木々は焼け焦げ、焼損によって倒れた木の下を通る場所もあり、リアス海岸特有の美しさを伝え、東日本大震災の復旧・復興につなげる従来の役割に加え、ハイカーに大火の現実を示し、自然環境を守る大切さも伝える。(佐藤 壮)

 

 三陸鉄道綾里駅から7・7㌔先に位置する、綾里崎の突端部。のり面に伸びていた長さ10㍍超に及ぶアカマツの被災木が、道路を横切るように倒れていた。根元部分が焼損した爪痕を、生々しく伝える。通行再開を前に、市が枝払いを行い、車両1台が通り抜けるスペースを確保した。
 倒れたアカマツがある場所の近くから小道に入ると、灯台にたどりつく。小道のそばにある展望台から見渡す景色も、火災前から一変した。スギが伸びる間から海を眺める状況だったが、今は激しく焼け焦げた木々に葉はなく、水平線や灯台を見下ろすことができる。
 もともと、綾里崎はトレイルの中でも半島の海岸線近くを歩き、リアス海岸の地形を堪能できるコースとして人気を集めてきた。海と山が織りなす自然の美しさに加え、火災を受けた現実を静かに伝え、歩く人々に再び火災を起こしてはならない思いも抱かせる。
 みちのく潮風トレイルは、東日本大震災からの復興を見据えて環境省が策定した、三陸復興国立公園の創設を核とした「グリーン復興プロジェクト」の一つ。青森県八戸市~福島県相馬市の約1000㌔を結び、令和元年6月9日に全線開通した。
 開通から6年の節目に当たる今月9日に再開した綾里~赤崎の区間は、大規模林野火災のからの復旧・復興に向け、教訓の発信や記憶の風化防止といった役割も担う。民間団体がツアーを企画するルートでもあり、関係人口の拡大などにも期待が集まる。
 環境省大船渡管理官事務所の山本航国立公園管理官は「再開によって、大船渡の地域振興に貢献できれば。すでに歩いたことがある人も、また訪れて火災からの変化を感じ取ってほしいし、初めての人も、大船渡を応援する気持ちを込めて歩いてもらえれば」と期待を込める。
 大規模林野火災の延焼区域には、三陸町綾里〜赤崎町に綾里峠コースと綾里崎コースがある。環境省東北地方環境事務所や市、認定NPO法人みちのくトレイルクラブなどでは大規模林野火災を受け、両コースを含む三陸鉄道の三陸駅~盛駅の区間約40㌔は立ち入らないよう周知してきた。
 関係機関は6月上旬までに、10回にわたり現地調査を実施。林野火災や強風の影響と思われる倒木も処理し、歩くのに支障がないことを確認した。公民館関係者や地域住民にも説明し、被災区間をハイカーが訪れることに肯定的な意見が寄せられた。
 通行できるようになった一方、同事務所などでは「リスクがあることは間違いない」として、注意を呼びかける。再開に向け、各地に注意情報をまとめた看板を設置した。
 焼損した樹木は、枝の落下や倒木の危険がある。周囲をよく確認するだけでなく、雨風が強い日は通行を控えるよう求める。下草や落ち葉が焼損したことで地表の土砂が流れやすく、大雨後も数日間は土砂流出などへの注意を促す。
 また、被害区間では「喫煙や火器の使用は厳禁」とし、住宅や建物の撮影自粛も求める。通行が困難な場所を発見した場合は、碁石海岸インフォメーションセンター(℡29・2359)に連絡するよう呼びかける。