森林管理によるJークレジット制度──「ぜひとも進めたい」 市議会一般質問 財源確保や民間活用へ当局意欲示す 

▲ 大規模山林火災による延焼面積が3370㌶に及ぶ中、広大な被災森林を復旧させる財源確保や施業能力確保が課題に=三陸町綾里

 大船渡市議会6月定例会は19日、通告に基づく2日目の一般質問が行われ、6議員が大規模林野火災や市の重点施策を巡って論戦を交わした。被災した山林復旧に向けて当局は、民間活用への関心が高まる中、山林による温室効果ガスの吸収量を国が認証し、企業などの購入で収益が生まれるJ─クレジットの取り組みについて「ぜひとも進めたい施策」と述べた。復旧・復興施策との並行的な準備など業務負担への懸念も触れたが、実現への意欲を示した。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやりとり)

 

 同制度を取り上げたのは、佐藤優子議員(光政会)。森林環境の再構築について「単なる原状回復にとどまらず、持続可能な管理と資金循環の仕組みが求められる。脱炭素の取り組みとして導入し、企業によるクレジット購入を通じて得られる資金を、林野火災で被害を受けた整備に活用すべき」とし、当局の見解を求めた。
 J─クレジットは、森林管理などの取り組みによる二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの吸収量をクレジットとして国が認証し、企業等が購入することでクレジットの収益を得る取り組み。陸前高田市では、今年2月から森林クレジットの販売を進めている。
 藤枝修副市長は「当市にとって、ぜひとも取り組みを進めたい環境施策の一つ。大規模な森林災害復旧事業など、今後長期的に森林整備に取り組むにあたり、財源として有効な手段となる可能性がある」と答えた。
 専門機関の審査を経て登録申請を行うほか、認証委員会での審査で「適切」となれば制度登録が認められる。その後、実際の森林活動に基づいた二酸化炭素の吸収量を算定したモニタリング報告書を作成したうえで、認証・発行の申請を行い、認められればクレジットが発行されるという。
 一連の書類作成、審査機関への対応が必要になるほか、審査やモニタリングへの費用発生や審査タイミングに合わせた進捗管理にも触れ、災害復旧を進める中で業務負担が見込まれる懸念点にも言及。それでも藤枝副市長は「市民からも注目の高い制度があると認識しており、実現に向けてできる限りの努力をしたい」と語った。
 森林災害復旧事業は激甚災害指定を受けて実施するが、延焼範囲や地域が広大・急峻である中、既存制度下の4年間(令和10年度まで)の事業完了は困難な状況が見込まれる。市側は事業期間の延長など柔軟な運用に加え、国などに必要な財政支援策を訴えている。
 同事業は国費や特別交付税措置を受けられ、市の実質負担は1割。一方、年間100㌶を整備した場合、全体事業費概算は7億3700万円で、市負担は7300万円に上る。延焼区域の人工林が1700㌶に及ぶ中、復旧を進める中で費用負担が大きな課題となっている。
 一般質問では、今後の森林復旧事業でも論戦が交わされた。山岸健悦郎農林水産部長は「復旧対象となる範囲のうち、住民安全確保などの観点から、生活の影響が想定される箇所などを優先的に進め、労働力のバランスなども見据えながら可能な限り広い面積を復旧させたい。植栽や施業方法も含め、国や県の知見も参考にした復旧計画を検討している」と答えた。