末永いつながり願い演奏 名古屋フィルがコンサート(別写真あり)
令和7年6月24日付 6面

陸前高田市高田町の奇跡の一本松ホールで22日、愛知県名古屋市の名古屋フィルハーモニー交響楽団によるコンサートが開かれた。市内外の509人が来場し、奏者50人余りのフルオーケストラの甘美な響きに浸って心を癒やしつつ、友好都市協定を結ぶ両市の末永いつながりを願った。
名古屋市は、東日本大震災後に陸前高田市の行政全般を支援する「丸ごと支援」を展開し、平成26年には同協定を締結。行政の枠を超え、市民同士の交流も盛んに行われている。
コンサートは両市の市民芸術文化交流事業として企画され、同楽団と両市が主催。日本芸術文化振興会の芸術文化振興基金助成事業を活用し、㈱共立ソリューションズが協力した。
同楽団のフルオーケストラによる演奏会は令和5年以来2年ぶり。今回は、大船渡市大規模林野火災で被災した人の無料招待枠を設け、75人を招待した。
演奏に先立ち、佐々木拓市長は「名古屋フィルの皆さんの演奏を聞けることは本当に幸せ。肩の荷を降ろし、ゆっくりとしていってもらいたい」とあいさつ。
名古屋市の松雄俊憲副市長は、陸前高田との交流事業を振り返りながら「これからも末永く、陸前高田のみなさんと助け合いをさせていただきたい」と願った。
ステージ最初の曲は、金管楽器と打楽器による『市民のためのファンファーレ』。陸前高田市が今年で市政70周年を迎えることから、力強く突き抜けるような華やかな音色で節目の年を祝福した。
続いて〝70〟にちなみ、エドワード・エルガーの『ためいき 作品70』を弦楽器中心の構成で演奏。透き通るように美しく洗練されたハーモニーを響かせ、観客もうっとりとした表情で心を満たした様子だった。
その後はフルオーケストラ編成となり、名古屋の名物をイメージして作られた『しゃちほこゴールデンマーチ』などを演奏。ベートーベンの『ロマンス第2番ヘ長調 作品50』では、震災で被災した高田松原のマツで作られた「TSUNAMIヴァイオリン」でのソロも披露された。
観客は、指揮者の松井慶太さんによる楽曲説明にも耳を傾け、曲ごとに異なる音の表情を深く味わった様子。音楽を通じて陸前高田に思いを寄せる奏者らの〝名演〟に、何度も盛大な拍手を送っていた。