「想定外」への対応課題に 町が総合防災訓練 災害対策本部の運営メインで(別写真あり)
令和7年6月24日付 1面

住田町は22日、町内全域で大雨による土砂災害などを想定した総合防災訓練を行った。今回は災害対策本部の運営に重点を置いて訓練を展開し、想定外の事態への対応が課題として挙がった。近年、全国各地で自然災害が発生し、その被害も多様化・甚大化する中、日頃から災害時のあらゆるケースを想定し、備えておくなど高い防災意識の必要性が問われる訓練となった。(清水辰彦)
この日は一般町民722人、町職員59人、町消防団員117人、消防署員、町女性消防協力隊など合わせて約1000人が参加した。
今回の訓練は大雨による土砂災害などを想定。盛岡地方気象台から洪水警報が発表され、町が災害警戒本部を設置▽県内で土砂災害が発生して県が警戒本部を対策本部に移行し、「高齢者等避難」も発令された▽県内に記録的短時間大雨情報が発表、住田町では土砂災害警戒情報が発表されたことを受けて、避難指示が発令された──という状況を仮定して行われた。
訓練のメインとなったのは町災害対策本部の運営。第1回の本部会議では、神田謙一町長を本部長に、小向正悟副町長、松高正俊教育長、各課長、消防や県の担当者が庁舎の一室に集まり、気象状況や町内の避難者数に加え、福祉、産業、建設、防災、財政など各部門でそれぞれ町内の状況を報告し、情報を共有した。
第2回の会議では、道路の浸水や倒木、高齢者の避難などについて住民から問い合わせがあったと想定し、細やかに対応を確認。
一方、町民は地域ごとに避難を行い、災害時の避難経路などを把握。町内5カ所に設置された指定避難所では、職員らが有事の際のスムーズな受け入れに向けて、本番さながらに動いた。
上有住地区の旧有住中グラウンドでは、消防団員、消防署員らが水害防御と救助訓練を展開。河川の氾濫や土砂崩れを想定し、シート張りや土のう積み、土砂崩れに住宅が巻き込まれたケースを想定した救助訓練も行った。
対策本部の運営訓練では、町の所管ではない県立住田高校に関して、町としての対応をどうするか、多くの観光客が訪れる滝観洞の状況は把握できているかなど、シナリオにはない〝抜き打ち〟での質問が上がることで即応体制をチェックしたほか、訓練が慌ただしく進む中で一部連絡体制が乱れるなど、有事の際に生じる可能性がある想定外の事態への迅速かつ適切な対処も課題として浮かび上がった。参加者は訓練を通して、平時からさまざまな状況に備えておくことの重要性を再認識していた。
神田町長は「より本番に近い形の中で緊張感を持って対応することができた。訓練での課題をリストアップして、現実に災害が起きた際に効率的に対応できるようにしていきたい」と話していた。