地域安全学会技術賞を受賞 市の災害情報伝達システム 7月に応答訓練実施
令和7年6月25日付 7面

陸前高田市が全国に先駆けて令和5年度に導入した災害時における情報伝達システムが、本年度の地域安全学会技術賞を受賞した。災害時に事前登録した市民に自動音声で一斉に電話を掛け、避難情報を伝え、電話を受けた市民が安否状況などの質問に応答すると、人工知能(AI)が音声を文字化して災害対策本部に情報が集約される仕組み。7月6日(日)に市内で行う土砂災害・洪水避難訓練でも同システムを運用し、応答訓練などを実施する。(高橋 信)

表彰式で賞状などを受け取った中村局長㊨=兵庫県神戸市
表彰式は5月中旬、兵庫県神戸市の「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」で開かれた地域安全学会大会(春季)の席上で行われ、中村吉雄防災局長が出席した。受賞者による記念講演もあり、中村局長が同システムの仕組みや運用状況などを説明した。
本年度の学会技術賞には7件の応募があり、▽実績▽有用性・実用性▽革新性・新規性──など五つの項目に基づいて審査が行われ、同システムの1件が受賞した。表彰の該当者を「なし」とする年もあるほど審査が厳しく、過去の受賞者には防災・減災分野における著名な研究者が名を連ねており、市には研究機関の関係者らから祝福の声が寄せられている。
同システムは災害時に支援が必要な市民らに対し、避難情報を電話発信する「オートコール」と、安否状況を把握するAI機能を組み合わせたもの。
防災関連情報は、防災行政無線やSNSを駆使して発信しているが、無線の音声が聞き取りづらいエリアがあるほか、SNSになじみがない高齢者がいる地域課題を踏まえ、市が「情報の到達度をより高める新たな方法を」と、NTT東日本と共同で開発。5年11月に運用を開始した。
同システムの特徴は、事前登録した固定・携帯電話に自動音声で避難情報を伝えるだけでなく、市民が現在地やけがの有無などの質問に回答すると、AIが音声情報を文字化し、一覧で確認できる機能だ。行政による一方通行の情報発信ではなく、市民との「双方向」の情報のやり取りを可能とし、職員の参集状況や避難者の人数・状況確認、高齢者の見守りなどにも生かせる汎用性の高さから、他自治体でも取り入れる動きが広がっている。
7月6日の土砂災害・洪水避難訓練は、竹駒町壺の沢地区を対象地に実施する。事前登録した住民に避難行動を促す情報を発信し、応答訓練を行う。
中村局長は「防災の現場から出てきた課題の解消策として導入された当市のシステムが、学会から有益なものと認められ、素直にうれしい。システムを構築して終わりではなく、利用しやすくなるように今後もカスタマイズしていきたい。利用者には出前講座で説明するなど丁寧に周知を図り、親しんでもらうよう努めていく」と話す。