マンパワーで復興後押し 岩手銀行が人材派遣型の企業版ふるさと納税 市のJ─クレジット推進に期待
令和7年6月27日付 7面

大船渡市は26日、企業版ふるさと納税(人材派遣型)の寄付を活用し、7月から同市に社員を派遣する㈱岩手銀行(岩山徹頭取)に、市ふるさと企業アンバサダーの委嘱状を交付した。同行による大規模林野火災の復旧・復興支援策の一環。派遣行員は今後、温室効果ガスの吸収量を国が認証し、企業などの購入で収益が生まれるJ─クレジットの取り組みなどの業務で活躍が期待される。(佐藤 壮)
委嘱状交付式は、岩手銀行からの企業版ふるさと納税寄付贈呈式と合わせ、市役所で開催。同行からは、岩山頭取や長瀬俊章執行役員地域振興部長、同部所属で7月から派遣される大原雄希さん(43)が出席し、市側は渕上清市長や藤枝修副市長、山岸健悦郎農林水産部長らが臨んだ。
岩山頭取が目録を渕上市長に手渡し、委嘱状などを受け取った。関係者による記念撮影も行われ、復旧・復興のさらなる推進を誓い合った。
渕上市長は「大変心強い支援。火災の影響を受けた多様な方々の生活やなりわいを早期に再建できるよう取り組んでいるが、企業の皆さんとのパートナーシップ構築が不可欠」とあいさつ。
岩山頭取は「人材派遣型の仕組みを通じ、復興に向けた行政施策を後押ししたいという思いから実現したもの。地域の皆さんが安心して暮らせるまちづくりへの力となれれば。ともに復興と未来づくりを進めたい」と述べた。懇談では大規模林野火災の復旧・復興にとどまらず、民間視点を生かした市役所内の業務改善といった波及効果への期待も話題となった。
人材派遣型の企業版ふるさと納税は、専門知識やノウハウを持つ企業人材を自治体に派遣することで、地方創生の充実・強化につなげる取り組み。国が認定した自治体の地方創生プロジェクトに対し、企業が人件費を含む事業費を寄付し、寄付と同じ年度に行政職員として任用されると、当該経費の最大9割に当たる法人関係税の軽減効果が受けられる。
大船渡市、岩手銀行ともに初の活用。市によると、県内では3例目という。
大原さんは平成16年に入行。現在は地域貢献部グリーン営業推進チームに所属し、J─クレジットの活用をはじめ、環境分野関連の企業支援などの業務にあたる。7月から市農林課職員の一員として任務に当たるのを前に、「微力だが、しっかり使命感を持って務めたい」と意欲を語る。
J─クレジットは、森林管理などの取り組みによる二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの吸収量をクレジットとして国が認証し、企業等が購入することでクレジットの収益を得る取り組み。陸前高田市では、今年2月から森林クレジットの販売を進めている。
今月24日まで開かれた市議会6月定例会の一般質問でも話題に上り、市当局は「ぜひとも取り組みを進めたい環境施策の一つ。大規模な森林災害復旧事業など、今後長期的に森林整備に取り組むにあたり、財源として有効な手段となる可能性がある」と答えていた。災害復旧を進める中で業務負担が見込まれる懸念点にも言及しており、今回の新たな人材派遣を生かしながら活用を進める。