15年ぶりに3海水浴場開設 三陸町の綾里、越喜来浪板、吉浜 震災後初、がれき撤去処理終え 7月12日に海開き式典

▲ 今夏は開設を予定している吉浜海岸

 大船渡市は今夏、三陸町の綾里(白浜)と越喜来浪板、吉浜の各海水浴場を開設する。3海水浴場そろっての開設は東日本大震災以降では初めてで、平成22年以来15年ぶり。昨年まで6年連続で見送りが続いた吉浜も、がれき撤去等の処理を終え、安全性が確認された。開設期間は7月12日(土)~8月17日(日)。海開き式典は、初日の12日午前10時から吉浜で行われる。(佐藤 壮)

 

 市が開設する海水浴場は、いずれも震災による津波で甚大な被害を受けた。平成23年度以降、夏場の開設を見送り、関係機関と連携して防潮堤等の復旧・復興工事、海底がれきの撤去などを進めてきた。
 29年度には、浪板が気仙で震災後第1号となる海開きを実施。30年度は吉浜も、遊泳区域を制限したものの海水浴が可能となった。
 その後、綾里も防潮堤の整備が完了し、令和元年夏に待望の海開きを迎えた。同年は浪板でも開設されたが、吉浜は監視体制が整わず、見合わせた。
 令和2、3年はコロナ禍でいずれも開設を断念。4~6年度は、綾里と越喜来浪板2カ所での開設となった。
 砂浜が広がる吉浜は、震災前は県内外から多くの海水浴客が訪れる市の代表的な海水浴場として人気を集めた。平成23年以降、被災による防潮堤の倒壊や砂の流出により、石の露出や海中コンクリートがれきが確認されたほか、吉浜川からの落ち葉流入による海中の視界不良など、安全が確保できない状況が続いていた。
 市は一時、復興交付金の活用による復旧を検討。吉浜海岸は県が海岸管理者である農地海岸となっていたため、事業実施できなかった。こうした中、一日も早い吉浜海岸の復旧や活用に加え、状況改善に向けた速やかな対応を求める声が寄せられ、市も対県要望に盛り込んできた。
 県は複数年にわたる復旧整備で、遊泳想定区域内の海中がれきを撤去。市は今後も、県が実施した測量調査の結果や砂浜の状態を踏まえ、良好な海岸環境の整備に県と連携しながら取り組む方針を示す。県の7年度予算でも一定の予算措置を講じており、市は本年度実施の体験要望では項目を外すことにしている。
 吉浜では昨年4月、住民自治組織の吉浜まちづくり振興会(新沼秀人会長)が発足。準備段階のワークショップでは、吉浜海岸を生かした活性化策のアイデアが寄せられた。同年7月には「吉浜海岸復活大作戦」を開催し、海岸の清掃を行ったほか、子どもたちが「宝探し」を楽しむなど、再開への期待を膨らませながら活気を生み出した。
 同振興会では本年度、今月29日(日)に海岸の清掃、海開きの来月12日には「宝探し」を予定している。新沼会長は「われわれとすれば『待ってました』という思い。震災以前のような砂浜の状態ではないが、それでも遊び方はあると思う。子どもたちが波打ち際で遊ぶ姿が戻るだけでもうれしい」と期待を寄せる。
 市観光交流推進室の古内弘一次長は「三陸町の海水浴場は貴重な観光資源。来てもらうことで大規模林野火災の復興につながる。安全配慮を徹底しながら遊泳区域を設けるなどして開設したい」と話す。
 綾里と浪板は昨年、7月13日~8月18日の37日間開設。綾里は975人、浪板は2233人訪れた。両海水浴場とも、シャワー室や駐車場が比較的近く、家族連れなどの人気を集める。
 本年度も、運営は一般社団法人市観光物産協会が担い、陸上・海上監視業務やシャワー室・公衆トイレなどの管理にあたる。開設時間は、3海水浴場とも午前10時~午後4時。悪天候時は開設しない。