正しい知識で重篤化防げ 大船渡労基署 「熱中症対策」強化呼びかけ 今月から全ての職場が対象に 

 改正労働安全衛生規則の施行に伴い、今月から全ての職場において熱中症対策の強化が求められている。気仙では今月、大船渡で26日までに日中の最高気温が30度を超える「真夏日」を3日観測するなど、熱中症に注意が必要な暑い日が続いている。大船渡労働基準監督署(西村浩二署長)では各事業所に対し、重篤化を防ぐために熱中症に対する正しい知識を持って対処し、労働者一人一人の健康管理にも十分気を配りながら対策を進めるよう呼びかけている。(三浦佳恵)

 

 熱中症は、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温の調節ができなくなり、心身の機能が損なわれる状態。対応が遅れると死に至るケースもある。
 岩手労働局によると、令和6年の熱中症による県内の労働災害被災者数は129人で、このうち休業4日以上は12人。大船渡署管内は3人だった。
 暑さが厳しくなる7月から8月にかけて、朝の涼しい時間帯から気温が上昇し始める午前10時~11時台が多いという。年代別では20代が最多を占めた。
 近年は全国的に熱中症による死亡災害が増加傾向にあり、その多くの要因が「初期症状の放置・対応の遅れ」とされる。厚生労働省は「死亡(重篤化)させないための適切な対策が必要」として、今月1日付で改正労働安全衛生規則を施行し、全ての職場で熱中症対策の強化を義務づけた。
 対象は、「WBGT(暑さ指数)28度以上、または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上、または1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業。事業者は、職場で熱中症を疑う症状が出た場合に報告するための体制を整備し、あらかじめ緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先、所在地を設定しておく必要がある。重篤化予防のために必要な措置の手順作成と、関係作業者への周知も求められる。
 屋外や気温が高い屋内での作業時には、暑さ指数を低減させる措置や休憩場所の整備、時間の短縮、暑熱順化、水分や塩分の摂取、通気性の良い服装、2人以上での実施、作業時の巡視などを挙げる。暑熱順化は熱に体を慣らして環境に適応することであり、汗をかく適度な運動や入浴などを、数日から2週間程度続けるトレーニングが有効とされる(ただし、高温時や体調不良、持病がある場合は避けること)。
 また、日頃からの健康管理も熱中症対策では重要なポイント。大船渡労基署によると、朝食を取らなかったり、睡眠不足、二日酔いなども熱中症を引き起こす可能性があり、高血圧や高脂血症、糖尿病といった持病がある人、喫煙者もリスクが高いという。
 同省の「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」(別掲QRコード)では、「熱中症を防ぐ三つの注意点」(別表)を紹介。前日、仕事前、仕事中のそれぞれで熱中症予防の確認項目を掲げており、日頃からの管理に役立てられる。
 万が一、ふらつきや生あくび、めまい、不快感など熱中症を疑う症状が現れた場合には、直ちに涼しい場所に移動させ、体に水をかけるなどして冷やし、意識の有無を確認する。意識がなかったり、普段と様子が違う場合は、迷わずに救助隊の要請や医療機関への搬送を行う。対応に迷う際には、「#7119」による電話相談もある。
 同署では、「全ての職場が熱中症対策強化の対象と認識し、まずは正しい知識を持ってほしい。誰でもなり得るものなので、日頃からの対策や発症時の初期対応をしっかりし、重篤化を防いでもらいたい」と呼びかけている。