間接的被害〝爪痕〟幅広く 大規模林野火災 大船渡商議所の会員事業者調査 町別、業種別の分析も
令和7年6月29日付 1面

大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)は、今年4~5月に実施した大規模林野火災に伴う会員事業者被害状況調査から、町別や業種別の分類をまとめた。間接被害に関しては、避難指示対象となった三陸町綾里や赤崎町にとどまらず、事業所が多い大船渡町や盛町にも及んだ〝爪痕〟が改めて浮き彫りに。業種別では飲食やサービス業、小売業、建設業、製造業など多岐にわたり、営業停止や売り上げキャンセルによる被害額の概算は117件で計3億222万円となった。(佐藤 壮)
調査は4月21日~5月13日に実施し、会員1493事業者に対して郵送で調査・回答用紙を配布。41%に当たる615事業者が回答した。
避難指示をはじめ休業・売り上げ減少など「間接的な被害がある」と回答したのは156事業者(25・3%)。事業者数の内訳をみると、最も多いのは大船渡町の53事業者で、次いで赤崎町35事業者、盛町と三陸町綾里が各16事業者、同越喜来が14事業者と続いた。
町別の回答事業者割合では、赤崎町と三陸町綾里、同越喜来が50%前後と高く、具体的な内容は「事業活動の一時停止・短縮による販売額の減少」が大半を占める。三陸町綾里は2月26日~3月10日に全域で避難指示が出され、赤崎町内も延焼が広がる中で順次避難対象区域が広がり、住民や事業者の立ち入りが制限された。
大船渡町や盛町をはじめとした避難指示対象外の地区と、一部地域が対象となった越喜来では「キャンセルなどによる損失」が多い。盛町や越喜来では「風評被害等による客足の減少」も目立つ。
一方、「間接的な被害がある」と答えた業種別では、飲食業が最多で27事業者。理美容や設計、葬祭など「その他のサービス業」が26事業者、小売業25事業者、建設業20事業者、農林漁業10事業者、医療・福祉とその他(銀行、協同組合など)が8事業者、食品製造業とその他(製材、セメント関連など)の製造業、運輸業が各7事業者、宿泊業が6事業者となった。
飲食業(50事業者)と宿泊業(12事業者)だけをみると、いずれも回答割合は半数以上となった。他の業種に目立った増減幅はなく、業種の枠を超えて幅広く影響が及んだ実態が分かる。
被害内容では建設業や食料品製造業、その他の製造業で「事業活動の一時停止・短縮による販売額の減少」を挙げた割合が7割を超えた。「キャンセルなどによる損失」は飲食業や宿泊業、医療・福祉で6割超に。宿泊業では「風評被害による客足の減少」も高かった。
営業停止や売り上げキャンセルによる被害額概算は117事業者で計3億222万円。最大被害額は8000万円だった。
火災発生日から3月末までの前年対比による売り上げ減少率(167事業者回答)は「10~30%減少」が31%と最多。「10%未満の減少」が17%、「30~50%減少」が14%、「50%以上の減少」が8%となり、「影響なし」は9%、「増加した」は4%だった。
調査結果は、27日の定例記者会見で示された。大規模林野火災発生から4カ月が経過した復旧・復興事業に伴う経済効果の現状について、商議所では「実感はあまり感じていない。物価高騰もあり、節約志向が強まっている。飲食店も『まだ戻ってきていない』という声をよく聞く」とする。
米谷会頭は「大船渡の知名度が高まった面もある。そういったことを活用し、積極的な販路開拓や物品販売など、前向きにとらえてやっていきたい。大船渡を視察も含め、訪れる人も増えてきているのでは。少しでも良い印象を持ってもらえるように」と今後を見据える。
市は、これまで寄せられた災害見舞金やふるさと納税を活用し、幅広い分野に及ぶ影響や課題解決を進める方針。きょう29日からは、市内の宿泊施設を利用する観光客に対し、1泊当たり上限3000円の助成と、飲食店で使用可能な1000円分のクーポン券を配布する市の「大船渡復興割事業」が行われる。
市内16施設が対象。12月1日(月)のチェックアウトまでが期間で、土・日、祝日の前日に加え、8月3日(日)~14日(木)の宿泊は対象外となる。事業予算は1万人分を確保している。
町別の被害状況回答などは別掲。