自動車使用の容認要件示す 津波避難対策検討会議が市に報告書提出 〝率先役〟の事業者登録制度創設も
令和7年7月5日付 1面

大船渡市津波避難対策検討会議が4日に市役所で開かれ、令和6年度からの検討を踏まえた結果報告書をまとめ、終了後に渕上清市長に提出した。津波災害時の「犠牲者ゼロ」に向け、徒歩避難の原則は変更しない一方、自動車避難を容認する対象者や可能地域例を盛り込んだ。さらに、警報発表時に率先して避難し、周囲の住民や観光客にも呼びかける事業者登録の制度創設も盛り込んだ。市は今後、8年度までに津波避難計画を修正するなどして実効性のある体制を目指す。(佐藤 壮)
「原則徒歩避難」は変えず
委員は学識経験者や市内各種団体の関係者、市各部長ら17人で構成。会議は3回目の開催で、本年度は初めて。16人が出席した。大規模林野火災の影響で開催が遅れていた。
協議は検討会議としての結果報告書の確認で、報道陣には非公開で行われた。終了後に委員長を務める県立大学防災復興支援センターの杉安和也副センター長が報告書を渕上市長に手渡した。
渕上市長は「さまざまな角度から検討をいただいた。報告書の内容は地域防災計画に反映し、実行性ある避難対策に取り組みたい。命を守る点では、避難所にたどりつかなくても、安全な場所に移動することを大事。人と人が呼びかけ合い、早期に避難することも徹底したい」と語った。
杉安委員長は「一番大事なのは、一人一人の命を守るための手段をいかにして確保するか。すべての地域で結果報告書の内容が実現できる事は難しいと思うが、将来のまちづくりの中での検討材料としても活用してもらえれば」と述べた。
報告書によると、自動車避難のあり方については「徒歩避難の原則を変更しない」と明記。一方、徒歩での避難が困難な地域住民や事業従事者には、自動車による避難を容認する必要性も掲げた。
地域住民向けには、避難時に自動車を使わざるを得ない例として、避難行動要支援者や、徒歩避難が困難な人を挙げる。避難可能地域は「幹線道路(国道、県道)と平面交差(横断)しないで、津波浸水想定区域外に避難できる道路が確保されている地域。ただし、幹線道路の交通量が少なく、容易に横断できる地域は除く」とし、徒歩避難者の避難を妨げない道路幅や地域内に駐車場スペースを確保できる地域に限定する。
また、国道45号などの幹線道路を横断する要支援者らが迅速に避難するためには、通行量を抑える必要性にも言及。津波警報発表時に国道45号の一部区間が通行止めになることなどを周知する。
津波警報発表時に、浸水域に構える事業者の従業員らが率先して避難するとともに、避難時に周囲の住民や観光客らに避難の呼びかけを行う事業所の登録事業創設を検討する方向性も盛り込んだ。議論では、今年の大規模林野火災時に住民が声を掛け合って迅速な避難行動につながった事例を踏まえ、「共助」の重要性が改めて浮かび上がったという。
実効性のある津波避難対策確保に向け、短期的な取り組みとして令和7~9年度のスケジュールを取りまとめた。自動車避難のあり方に関しては8年度までに津波避難計画を修正し、周知を行う。国道45号など渋滞対策検討や避難誘導看板の設置も本年度から検討・協議を重ね、まとまり次第対応をとる方向性を掲げている。