念願の新店舗で活気を 末崎町泊里の震災被災地に「斉藤商店」 ワカメなど加工品販売に意欲(別写真あり)

▲ 新店舗からの活気創出に意欲を見せる齊藤さん夫妻

 東日本大震災で甚大な被害を受け、建物が減った大船渡市末崎町の泊里地域に、地元産のワカメやコンブの加工商品などを扱う店舗「斉藤商店」(齊藤満代表)がオープンし、地域住民らに喜ばれている。ワカメ養殖に従事して半世紀を迎えた齊藤代表(73)が「自分の集大成に」と整備し、家庭で気軽に味わえる商品を中心に販売。念願だった新店舗で、利用が少ない部位の商品展開や、地域の活気創出などにも意欲を見せる。(佐藤 壮)

 

 齊藤代表は同町出身。20代前半から父からワカメ漁を継ぎ、地元の浜で育て、塩蔵加工を中心に出荷していた。
 養殖ワカメは、葉やメカブ部分の間に位置する「元茎」が積極的に加工されず、収穫時に海に放たれることも多かった。齊藤代表は元茎も塩蔵加工して出荷していたが「漁業者であっても、加工して家庭で食べやすいものをつくらなければ」と商品開発・販売への夢を持ち、40代から加工用の機械を持ち続けてきた。
 14年前の東日本大震災で沿岸全体が甚大な被害を受け、自宅や加工場近くに冷凍施設を整備。復旧が進み、海上でのワカメ養殖や塩蔵加工が軌道に乗った中でも、商品販売の夢は消えなかった。70歳を過ぎて、一昨年から「集大成」として販売施設整備に乗り出した。
 被災前に農協施設があった泊里地内の空き地を購入。信漁連や東北銀行などの支援を受けて整備し、先月10日にオープンを迎えた。
 齊藤代表と孫の海斗さん(24)が育てたワカメ、コンブを原材料とした商品が中心。塩蔵加工は従業員8人が担い、店頭に並べる商品用には、齊藤代表と妻の惠子さん(66)が加工する。
 ワカメの中芯を生かしたキムチ和えが人気を集めるほか、元茎のつくだ煮など家庭ですぐに味わえる商品づくりを意識。おにぎりやTシャツなども並べ、観光客も購入しやすい店内にしている。今後は、タコをはじめ、末崎の海で取れた魚介類の販売も見据える。
 店舗を構え、うれしい反応があった。来店した地域住民から「齊藤さんみたいに、ここに建ててもらったのはいいね」と声をかけられた。県道沿いに多くの建物が並んでいた時代を知る住民も、新店舗を待ち望んでいた。
 齊藤代表は「まずは、地元に愛されなければならない。碁石は観光地でもあるので、観光客にも愛される店にしたい。地域の食材を生かしていくことができれば」と力を込める。
 不定休で営業時間は午前9時~午後3時。電話番号は29・3181。