よみがえれ 綾里の森林 岩大生らとつむぎの家 火災後初めての植樹作業(別写真あり)

▲ つむぎの家付近でナラの苗木を植える岩手大の学生ら

 大船渡市大規模林野火災で被害を受けた三陸町綾里で5日、火災後初めてとなる植樹作業が行われた。岩手大学(盛岡市)農学部の学生らと綾里の「大小迫つむぎの家」(千田耕基代表)が、森林インストラクターとともに50本のナラの苗木を植え、森林再生への先陣を切った。学生らは被害箇所の現地視察も行い、焼損状況や火の回り方を実際に確認しながら、森林の回復へ向けた道筋を探った。(齊藤 拓)

 

 大小迫つむぎの家は、私有地である小迫川流域一帯の里山を管理。樹木の間伐や、家畜の排せつ物などをたい肥に利用する農業に取り組み、動植物の多様性の保全を図っている。一方、2月の林野火災では、地中で冬眠中のカエルが死ぬなど、里山の生態系にも影響が及んだ。
 植樹は、同大教員がつむぎの家の里山で研究を行っている縁があり、火災後に支援の相談を持ちかけたことから決まった。
 同日は、森林や林業を研究する教員と学生合わせて23人と、森林インストラクター7人が綾里を訪問。植樹に先立ち、つむぎの家の千田代表の案内により、林野火災の被害に遭った里山を視察した。
 里山では、沢や尾根を挟んで焼損被害の度合いが異なる箇所が見られ、千田代表は「手入れをしている森林と比べ、そうでない森林で特に燃え広がったと見える。また、本来炎は山の上へと向かって上がるものだが、地形、風、炎の勢いで違いが出る」と説明。学生らも、遠目では確認できない地表が燃えた様子を間近で観察し、それぞれ当時の火の回り方を分析していた。
 その後は、つむぎの家付近で森林インストラクターから提供されたナラの苗木50本の植樹へ。学生らははじめに、在来種の生育への影響が懸念される外来植物・マルバフジバカマなどの雑草を抜き取る作業を行ってから、斜面に掘った穴へ苗木を植えていった。
 広葉樹のナラは20年ほどで伐採でき、切った箇所から新たな芽が生えて再び育つ。木材は木炭などに活用でき、つむぎの家では東日本大震災時、ライフラインが絶たれた中でも木炭で火をおこし、住民らが暖をとった。
 同日は、住田町下有住で農林業に取り組む平林慧遠さん(39)が植樹の指導役となったほか、調査を進めている被害木の活用について説明。試験的に伐採した被害木の断面を学生らと観察しながら、「(2㍍以下まで焼損した)中程度の被害木が圧倒的に多く、いかに利用するかが課題であり、研究を行っている」とした。
 つむぎの家の里山で、卒業論文のための研究を続けている門脇遼太郎さん(同学部4年)は「林野火災で延焼した3370㌶は、県で年間に行われている伐採面積を上回っており、すぐにはカバーしきれないぐらいの規模。植林はもちろん、土砂災害防止なども講じていくことで、森林の回復を図っていく必要がある」と、自然の再生を願っていた。
 千田代表は「里山では、過去に植えた木の芽をシカに食べられてしまったこともある。これから植樹を行うにあたっては、動物による食害もなんとかしなければ」と話した。