「ふね遺産」認定へ再挑戦 千石船気仙丸利活用推進協の本年度計画 セミナー開催やガイド養成も
令和7年7月9日付 7面

大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)が所有する木造千石船の復元船「気仙丸」は、陸上展示から今年秋で4年を迎える。利活用の充実や歴史的価値の掘り起こしを見据え、3年ぶりに「ふね遺産」認定申請を行うほか、気仙丸の価値や活用策などを学ぶセミナーを開催。気仙丸ガイド養成研修会も開くほか、船体修繕では費用確保に向けてクラウドファンディングの実施も計画している。(佐藤 壮)

総会で本年度計画を決定
気仙丸は江戸時代に気仙と江戸、九州地方の交易に活躍したとされる千石船の歴史を伝える復元船。長さ18・70㍍、幅5・75㍍、高さ5㍍。帆柱の高さは17㍍を誇る。
平成3年に完成し、翌4年には「三陸・海の博覧会」に協賛出品された。その後、赤崎町の蛸ノ浦漁港で係留され、14年前の東日本大震災時は流失を免れた。老朽化が進んだことから、気仙大工の技術や歴史継承を見据え、令和3年秋からおおふなぽーと付近で展示されている。
利活用推進協議会は、同4年に設立。商工会議所や市、市観光物産協会、今年5月に解散した気仙船匠会の関係者、㈲大船渡ドック、㈱キャッセン大船渡で構成している。
今月8日に商議所で開催した総会には、構成団体の関係者や商議所職員計14人が出席。米谷会長は「建造に関する資料やビデオ映像を見るたびに、大変な情熱を持って建造された船であることを認識し『何とかしなければ』という思いが強くなる。より活用して〝長生き〟できるように努力を積み重ねなければ」とあいさつした。
協議では、6年度の事業報告と収支決算、7年度の事業計画と収支予算をいずれも原案通り承認した。
本年度は、日本船舶海洋工学会が募集する「第10回ふね遺産」の認定に向けて申請手続きを進める。4年度にも申請し、認定には至らなかったが、昨年度も登録に向けたヒアリング活動を重ねてきた。募集は今年10~12月、発表は来年6月が見込まれる。
合わせて、気仙丸に関する市民向けセミナーを今年秋に計画。専門家を講師に招き、船の価値や活用、保存方法などを学ぶ機会をつくる。
来年2月ごろにはガイド養成研修会も開く方針。歴史的な価値や地域の文化を後世に伝え、案内できる人材づくりにも力を入れる。
6年度の繰越事業として、船体修繕も行う。費用確保に向け、修繕前の8月下旬~10月中旬には、クラウドファンディングにも取り組む。
協議会構成メンバーの一人で、長年、気仙船匠会の副会長を務めてきた菅野孝男さん(81)=陸前高田市気仙町=は「一番にやらなければならないのは、上部にある『やぐら板』からの雨漏り防止。屋根をかけるまではそれなりの時間がかかるだろうから、それまで何とか持たせなければならない」と話す。
本年度はさらに、気仙丸建造時の技術に関する記録動画の作成も。10月の市産業まつりに合わせ、毎年好評を博している「ふれあい展示会」を開催し、船内見学やパネル展示を行う。8月3日(日)の客船「飛鳥Ⅲ」、9月28日(日)の「にっぽん丸」の各寄港時には船内見学を受け付け、各種団体・個人による視察にも随時対応する。