2025参院選岩手選挙区/与野党対決軸の攻防展開 横澤氏…共闘態勢で集票加速 平野氏…基盤固め広がり狙う
令和7年7月9日付 1面

第27回参議院議員選挙は公示から7日目を迎えた。岩手選挙区(改選数1)には届け出順に、政治団体「NHK党」の新人・吉田博信氏(59)、立憲民主党の現職・横澤高徳氏(53)、参政党の新人・及川泰輔氏(46)、自民党の元職・平野達男氏(71)=公明党推薦=の4人が立候補。選挙戦は全県的に横澤、平野両氏による与野党候補対決を軸とした構図で繰り広げられ、気仙でも激しい攻防を展開。横澤氏は野党支持層を中心に攻勢を強め、自民支持層の切り崩しも狙う。平野氏は厚みのある支持基盤を固めながら無党派層の取り込みも図る。参政党の及川氏は党支持層を足がかりとして浸透に懸命。吉田氏は独自の戦いとなっている。全体の選勢は大票田の内陸部も鍵を握っており、情勢は流動的だ。(2025参院選取材班)
「今、必要な対策と、50年後、100年後を見据えた政策をしっかりと掲げ、挑戦者として戦う」。
7日、公示後初めて気仙入りした横澤氏は、大船渡市盛町のサン・リア前での演説会で、そう気勢を上げた。
6年前の前回選と同様に「野党共闘」の態勢を構築。令和元年、4年の参院選で自民党候補を推薦した県農協政治政治連盟(農政連)からは、平野氏との両名ながら推薦を受け、県漁連からも推薦を得るなど、支持の広がりをうかがわせる。
気仙では、後援会気仙支部(林﨑幸正支部長)の3市町議や連合岩手の推薦に基づき、連合気仙が支援。「共闘」する共産党などが支援し、会長が大船渡市内に住む県身体障害者福祉協会をはじめ、福祉関係者も支える。大船渡市を襲った大規模林野火災発生後は、現場の声を国政に反映させるべく、国民民主党県連などとの合同で現地への視察調査を実施した。
「政治とカネ」問題などを巡る政権批判票の受け皿となり、昨年9月の知事選で歴代知事最多の5選を果たした達増拓也氏が実質支援に回るなど、県内陸部などでは優位に立つとの見方もある。しかし、後援会気仙支部の関係者は、復興相などを歴任し、知名度が高い平野氏への警戒を緩めない。
支部の一人は「投票日は3連休の中日で、投票率低下の可能性もある。まだ始まったばかりで、長丁場の選挙戦。横澤候補の政策を気仙でも広く知ってもらうことが重要だ」と息巻く。横澤氏の出身地である矢巾町や県都・盛岡市を含む衆院1区、立憲民主県連最高顧問の小沢一郎衆院議員、選対本部長の木戸口英司参院議員の牙城である同3区の選勢の行方も注視している。
平野氏は6年前の前回選、衆院2区の市町村では手堅く票を集めてリードしたが、人口の多い盛岡市など内陸部で水をあけられ、新人の横澤氏に敗れた。
昨年12月に立候補を表明して以来、党所属の県議らとともに県内を細かく回り、訴えを響かせてきた。
元財務相で、現在は党総務会長の要職に就く鈴木俊一衆院議員(岩手2区)が選対本部長を務めており、〝二人三脚〟で支持拡大を狙う。気仙を含む衆院2区の市町村は国政選挙ではこれまで自民が優勢を保ってきたが、相手候補も沿岸部で票の切り崩しを図っており、これを防ぐべく支持基盤を引き締めている。
鈴木氏の地区後援会(鎌田和昭会長)や党支部などによる組織戦を展開。同後援会では今年、新たに青年部を立ち上げた。メンバーは50代以下が中心となっており、若年層や無党派層の取り込みにも力を入れる。
6月に大船渡市で開かれた鈴木氏の国政報告会には平野氏も同席するなど、連携の緊密さをアピールし、農林水産業、建設、医療・介護・福祉など各分野への浸透を図る。
公示翌日の4日には3市町を遊説し、幅広い分野の課題解決を訴え、鈴木氏も駆けつけた。農水省出身で、民主党政権時代に初代復興大臣を務めた経験を持つ平野氏。「農業改革、防災への対応は平野さんの専門分野だ」と、鈴木氏はその実績を示しながら、課題となっているの米価高騰、頻発する自然災害への〝対応力〟を強調する。
一方で、裏金問題や岩手選挙区選出の元参院議員の不祥事も響き、党への風当たりは強い。後援会幹部は「厳しい選挙だが、組織総動員でやれることに全力を尽くしていく。なんとか勝利を」と、精力的に動いている。
参政党の及川氏は、4日と6日に気仙入り。「このまま自公政権に任せていたのでは、日本は暗いままだ」と、声を張り上げた。
国民の暮らしを守ることを訴える党のキャッチフレーズ「日本人ファースト」を各地で主張。「日本が貧困になった原因の一つがグローバリズム」だとし、国内の土地やインフラを買収する海外資本に一定の規制をかけることも強調している。
気仙での遊説でも「国力が弱っているときにただ野放図に外国人を受け入れれば、日本人の生活は豊かにならない。それを止めたい」と主張。減税施策にも触れ、中小企業や個人事業主の売り上げアップや従業員の賃上げにつなげるため「消費税は一律減税、もしくは廃止」と訴える。
演説会場ではこうした訴えに耳を傾ける支持者の姿も見られ、気仙でも存在感をアピール。同党支持層を固めたうえでさらなる集票を狙う。
NHK党・吉田氏は、沿岸部では目立った活動を行っていない。