構成案巡り意見交わす 世田米の栗木鉄山跡 保存活用計画等策定委で
令和7年7月10日付 2面

令和3年に国指定史跡となり、国内の製鉄技術史においても貴重と位置づけられている住田町の「栗木鉄山跡」を有効に保存・管理・活用していくための計画等策定委員会(委員長・熊谷常正盛岡大学名誉教授)が8日、世田米の生活改善センターで開かれた。昨年7月に続き2回目の開催で、町教委が示した保存活用計画構成案について、委員らが意見を交わした。
栗木鉄山は、たたら製鉄が営まれた江戸時代から蓄積されてきた技術や自然資源を生かし、明治13年〜大正9年に操業された民営の製鉄所。世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。
操業中の大正2年には、国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇り、最盛期には500人超の従業員がいたとされる。郵便局、学校、職員住宅なども整備され、「製鉄村」が形成されていた。
第1次世界大戦中の好景気で絶頂期を迎えるが、大戦終結後の急激な需要減少によって大正9年に廃業となった。山間の地形を生かした高炉様式は全国的に見ても珍しく、日本の近代製鉄技術史上においても貴重な遺跡とされている。
設備のほとんどが解体され、現在は雑木林となっている。これまでの残存状況調査では第一高炉跡と第二高炉跡の保存状態が良好であることが判明。昭和58年に国道397号改良工事に伴って消滅の危機にひんしたが、町が路線変更を働きかけて遺跡は保存されたこともあって町による遺跡の公有地化が進められ、平成9年に町史跡、11年に県史跡、令和3年に国史跡に指定された。
町教委はこの経緯を踏まえ、遺跡の本質的価値を明確にし、適切に保存、活用していくための「国指定史跡栗木鉄山跡保存活用計画」策定に6年度から取り組んでいる。策定委員会は大学や県立博物館、まちづくり会社などの代表者らで構成。オブザーバーに県教委職員、住田町と関わりの深いナグモデザイン事務所(東京都)の南雲勝志代表を迎え、町教委と町文化財調査委員らが事務局を務めている。
同日の委員会には委員ら10人余が出席。町教委が示した計画構成案について協議した。計画は全12章で構成しており、この日は第1章から4章までを確認。1章は計画策定の目的と背景、2章は史跡周辺の概要、3章は栗木鉄山跡の概要、4章は史跡の価値と構成要素──について述べている。
委員からは「町の他の計画との整合性も図ったほうがよいのでは」「地域と栗木鉄山の関わりも盛り込むべき」といった意見が寄せられた。
今後は3月までに第3回、第4回の委員会を開催予定で、各章の内容を確認し、8年度の第5回委員会で全体の内容を検討。パブリックコメントなどを経たうえで、同年度中に策定する見通し。