下水道計画の縮小案示す 末崎全域と立根、猪川などの各一部除外へ 約100億円の投資抑制見据え

 大船渡市は、公共下水道基本計画の変更計画案をまとめ、8日に開かれた市公共下水道事業運営審議会(会長・小原勝午大船渡商工会議所事務局長、委員10人)で示した。住宅地は基本的に、事業計画が残っている立根、下船渡両分区のみで新たな整備を進め、立根町の北側や猪川町の久名畑地域、末崎町の全域を計画から外し、100億円程度の投資抑制を見据える。議会説明を経て、計画変更地域では説明会を開催する。 (佐藤 壮)

 

大船渡浄化センターで開催された下水道事業運営審議会

 運営審議会は有識者や受益者代表らで構成。渕上清市長は「整備区域を縮小し、将来にわたり持続可能な運営を確保したい」、小原会長は「皆さんの声を聞きながら、妥当な内容にしていきたい」と述べた。
 審議の中で市から示された縮小案は、現行の全体区域1137㌶のうち、事業計画区域をほぼそのまま残し、216㌶を削減した921㌶を新たな全体区域とするもの。処理分区別の区域面積は別掲の通り。
 計画見直しにあたっては、未整備区域のうち、下水道による集合処理と、浄化槽の個別処理ではどちらが経済的に有利になるかを、年当たりの建設費と維持管理費で地域ごとに比較。浄化槽が有利となる地域は、立根町の北側と、末崎町の南側にとどまった。
 さらに、事業計画外の区域を対象に住民アンケートを実施。下水道を整備した場合「3年以内に接続する」との回答は30・3%にとどまった。また、53%がすでに合併処理浄化槽を使用しており、その多くの世帯で「現在の浄化槽を使用するため、下水道には接続しない」と回答した。
 下水道が経済比較評価で有利とされても、十分な接続数が見込めない可能性が浮かび上がる。仮に接続率が3割程度にとどまった場合、使用料収入の減少や設備投資により、現在の月額料金3476円(20立方㍍使用)を大きく上回る5600円への値上げが必要になるとの試算が出た。
 市民生活への影響に加え、赤字分を繰り入れる市の一般会計への影響も懸念されるとし、市では「今後の汚水処理施設整備を、現実的かつ持続可能な形で進める方針」と理解を求めた。
 現事業計画で管渠整備が未整備となっているのは、主に立根分区と下船渡分区で、事業費は25億5400万円。現行の基本計画で残る面積を全て事業化した場合は131億円が見込まれ、今回の全体計画区域縮小で、約100億円の整備投資を抑え、財政負担軽減を見据える。
 計画区域の縮小により、末崎分区に加え、久名畑地域など猪川第三分区も全て計画から外れ、立根分区は北側が除外されることで約半分となる。計画人口は1万9580人から1万840人に減少し、1日平均の計画汚水量も約4割少なくなる。大船渡町や赤崎町では、岸壁部分に当たる港湾地区も削除して計画全体の縮小を図る。
 委員からは「経営の考え方と、市民の思いが融合できるのか。浄化槽設置に対する補助の上乗せは考えられないか」との質問も。市側は「今後検討する」との考えを示した一方、現状では浄化槽の設置と下水道の接続で大きなコストの差はない状況にも言及した。
 このほか「立根地区は(北側の)小学校まで整備してほしい気持ちもあるが、仕方がないのでは」「赤崎町は、住家に縮少の影響がほぼない」との声も。審議会としては変更計画案を了承し、市に答申する方針を確認した。
 市は答申を受け、市議会でも説明する方針。計画変更対象地域の住民向けには説明会を開く予定。
 下水道運営は一般会計からの繰り入れなどが続く厳しい財政を踏まえ、昨年4月に使用料金を改定。20立方㍍使用の場合、月額2750円から26・4%上昇し、3476円となっている。