2025町長選に見る住田町の課題㊤ 地域の活力 どう維持 人口減に起因の課題山積

▲ 人口減少が続く住田町。地域の活力をいかに維持していくかが課題だ

 任期満了に伴う住田町長選は15日(火)の告示まであと3日となった。現時点で立候補を表明しているのは、2期目の現職・神田謙一氏(66)=下有住=のみ。ほかに動きはなく、神田氏の無投票3選が確実視されている。人口減少を起因に、さまざまな分野で課題が現れている中、今後4年間の町政運営を担うリーダーは、地域の活力をどう維持していくのか。告示を前に、町政が直面する課題を探った。(清水辰彦)

 

 同町の6月末日時点の人口は4608人。高齢化率は48・4%で、県内でも上位だ。世田米町、上有住村、下有住村が合併して住田町となった昭和30年の約1万3000人をピークに、人口は減り続けている。
 国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、令和22年には町内人口が3182人にまで減少する見通し。人口減少、高齢化の流れが続くことによって経済活動が縮小し、それに伴う雇用の減少によって人口減がさらに加速する恐れもある。
 町では本年度策定した新たな総合計画の中で、同年の人口目標を3500人とし、人口減少の進行速度抑制、人口減少社会への適応に向けて各種施策を推進していく考えだが、目の前には多くの課題が積み上がっている。



 かつては宿場町として、多くの人が行き交った世田米商店街。店舗はどんどん減少し、後継者問題を抱える既存店も少なくない。同商店街で「泉田薬店」を営む世田米商店会長の泉田健一さん(67)は、「店も少なくなっていくし、地域にお金が落ちる要素が少なくなっているね」と語り、「店舗もそうだが、公民館役員、民生委員などのさまざまな組織でもなり手不足や後継者の問題がある」と、地域の活力維持に懸念を示す。
 「近年は滝観洞観光センターを訪れる観光客が増加しているので、まちの中心部にも来てくれるような仕組みも必要ではないか」と、回遊性向上を求める。
 同商店街にオフィスが設置されている、マーケティング支援会社・㈱ベストインクラスプロデューサーズ(東京都)の専門子会社・「㈱ビーアイシーピー・ハナレ」。同社の代表取締役・伊藤美希子さん(46)=神奈川県出身=は、東日本大震災を機に住田に移住した。マーケティング専門家としての知見から、「保有する資源をどう解釈し、いかに価値をつけるかが大事」と提言する。「商店街には元々、すごい資源がある。昔から続けている店も、近年開業した店舗もそう。空き店舗を活用した施設もあり、実はすでに価値創造に取り組んでいる。それを自覚してさらに推進していくことが大事ではないか。今あるものを、いかに発信していくかが求められる」と語る。



 人口減少が進む中にあって、地域の活気を維持していくには交流人口や関係人口の創出・拡大と移住定住の促進は欠かせない。
 町が「住田ならでは」の人材交流拠点と位置づけ、令和5年に整備したイコウェルすみたは、今年5月に利用者が5000人を突破するなど、町内外の幅広い世代による利用が進んでいる。
 施設を管理する町地域プロジェクトマネージャーの関博充さん(52)は、「住田町の情報が拾いにくく、情報にアクセスしづらい面もある。細かく情報を発信して、露出を増やしていくことも交流人口・関係人口の入り口になる」と、発信強化の必要性を訴える。
 「住田には素晴らしい景色もあり、来ればファンになってもらえると思う。来てもらう選択肢となるためにも、まちをあげて発信力を高めていかなければいけないのでは。地元民にとっては当たり前すぎて気付いていない魅力を発掘し、価値を磨いて発信していくことが必要」とする。
 滝観洞観光センターを例に挙げ「観光の起点となる場所がせっかくあるのだから、町内への回遊性を高めて、住田を通過するのではなく、滞在してもらうための仕組みもあればいい」と考えを巡らせる。
 町外出身者である伊藤さんと関さんの意見に共通するのが、「今あるものに価値を見いだす」ということ。町民が気付いていない魅力を発掘し、どのように地元内外にPRしていくのか。まちとしての「発信力」を高めていくことが求められる。