出火原因「特定至らず」 大規模林野火災  消防庁長官の調査報告書公表

▲ 白煙が立ち上る赤崎町合足地区(2月26日)

 消防庁と林野庁による「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」が15日に東京都内で開かれた。2月26日に発生した大規模林野火災の原因調査について、「薪ストーブの煙突の火の粉を起因とした出火が、他の検討対象と比較して相対的に高い可能性が認められる」としながら、「具体的な発火源、出火に至る経過・着火物の特定には至らない」とする消防庁長官の報告書が示された。
 火災原因調査を巡っては、3月17~19日に第1回調査、4月2~4日に第2回調査が行われたほか、5月には原因調査に関する実験も実施。出火原因、延焼拡大の状況や要因などについてそれぞれまとめた。
 出火箇所の検討では、火点とされる赤崎町の合足地区付近に建物の焼損が確認できない一方、出火時の風向きや付近の焼損状態から、出火場所は、「水産物加工・販売を主とする建物などがある敷地と山林の境界付近に位置する焼損が著しい切り株付近と考えられる」とした。
 電気設備や電気配線、たき火などによる出火の可能性や、不審人物などの目撃情報はない。建物東側にたばこのフィルターが落ちているものの、周囲で焼損などは確認できなかった。
 一方、出火場所から20㍍ほど離れた建物内では、暖房目的の薪ストーブが使用されていた。現場建物で用いられる同型品のストーブと、実際にこの建物で使われていた煙突を用いて火の粉の飛散実験や、火の粉が落ち葉などに着火するかの検証を行った。
 燃料を多くくべて急激な呼気変化が生じた場合、風速が高い環境下では、火の粉が煙突を通じて外部に飛散する可能性がある。また、火の粉で落ち葉に容易には着火しないが、継続的に投入した場合、有炎燃焼に至ることが確認できたという。消防庁の説明によると、出火当時、取扱説明書に記された量よりも薪を多く投入していたとみられるが、薪以外は入れていないという。
 報告書では、薪ストーブ内で生じた火の粉や、煙突内の堆積物に着火した火の粉が煙突から飛散する可能性はある一方、火の粉は比較的エネルギーの小さい火源である点も指摘。そのうえで「林床堆積物に到達したとしても、容易に着火するものではない。よって、火の粉を本火災の発火源として特定するには至らない」とまとめた。
 最終回となる次回の検討会は8月に開催。報告書などを取りまとめる。