ヤギの力で高田松原保全を 課題のクズ除去対策で実証実験 大船渡の2頭がサポーターに 摂食状況確認し対応検討(動画、別写真あり)

▲ 高田松原に繁茂するクズなどをヤギに与える実証実験がスタート

 県による「高田松原のクズ駆除対策にかかる実証事業説明会とクズ駆除体験会」は17日、陸前高田市の高田松原などで開かれた。東日本大震災の大津波で失われ、松林の再生が進む高田松原で、マツの成長に影響を及ぼすつる性植物・クズをヤギに食べてもらい、除去対策の検討材料にしようというもの。この日は関係者らが事業内容の説明を受け、実際にヤギがクズを食べる様子を確認し、クズ除去作業を体験した。県は今後もヤギを松原に放して摂食状況などを確認し、今後の対応を検討していく。(三浦佳恵)


 先人たちによって約7万本のマツが植えられ、白砂青松の美しい風景が広がっていた高田松原。平成23年の震災では津波で松林や砂浜が流され、「奇跡の一本松」だけが残った。
 その後、県や市、NPO法人高田松原を守る会(千田勝治理事長)が連携し、全国のボランティアの協力も受けて29年に松原の再生植樹に着手。令和3年に4万本にのぼる植樹作業が完了し、現在も県、市、守る会が連携して保全活動が続く。
 こうした中で、近年大きな課題になっているのがクズの繁茂。クズが急成長し、つるがマツの幹などに絡まって葉が覆うように広がり、木を枯らす原因にもなっている。
 県は昨年度、クズが繁茂するエリアでつる切りなどの除去作業に着手。本年度も、つる切りや枝打ちなどの作業を行う。さらに、海水浴場が近いために薬剤駆除ができないことなどを踏まえ、ヤギを活用する実証事業に踏み切った。
 17日は、県や市、守る会、東日本大震災津波伝承館、㈱高田松原などの関係機関から約20人が参加し、気仙町の国営追悼・祈念施設管理棟セミナールームで実証事業の説明会を開催。県大船渡農林振興センターの職員らが高田松原の保全活動、実証事業の概要を説明した。
 その後、参加者らは高田松原に移動。現地では、実証事業に協力する大船渡市日頃市町の鈴木信男さん(74)が飼育するヤギのムギ(3歳)とロロ(1歳)が出迎えた。事業サポーター任命式が行われ、守る会の小山芳弘副理事長からムギとロロにクズ製のリースが贈られた。
 ムギとロロは、防風柵に絡まったクズの葉やヨモギなど、日頃の保全活動で厄介者となっている雑草を次々と食べていった。参加者らはクズの除去作業に汗を流し、30分で35㌔のクズを刈り取った。回収したクズは鈴木さん宅で乾燥させ、ヤギたちが食べるか確認するという。
 鈴木さんは、「普段は人間が刈るよりもきれいに草を食べてくれる」と話し、ヤギたちの活躍に期待。千田理事長(77)は「ヤギが本当にクズを食べてくれるか心配したが、食べていて安心した。松原は広いのでどれくらいヤギで対応できるか分からないが、全国のボランティアの力も借りて保全を進めていきたい」と語った。
 同センターの髙橋真紀所長は「雑草を食べるヤギを活用して保全を進めるとともに、ボランティア活動への参加者を増やしたい狙いもある。50年後の美しい高田松原を目指し、息の長い保全活動をしていきたい」と話していた。
 実証実験では今後、今月下旬と8月下旬に高田松原で2頭による摂食状況確認などを予定。11月ごろには関係者らに中間報告を行うとしている。