吉浜太陽光発電事業の大船渡市長意見―― 「是認しない可能性」言及も 事業者に対し理解醸成や説明責任求める アセス準備書を議論

 大船渡市三陸町吉浜の大窪山市有地を中心とした大規模な太陽光発電事業の環境影響評価(環境アセスメント)準備書を議題とする県環境影響評価技術審査会が17日、盛岡市内で開かれた。資料で示された大船渡市長意見では、悪影響を懸念する市民らの意見に触れながら理解醸成や説明責任を求め、「適切な対応ができないと判断した場合は、事業計画を是認しない可能性がある点に留意を」との表記が盛り込まれた。
 同事業は自然電力㈱(本社・福岡県福岡市、磯野謙、川戸健司、長谷川雅也代表取締役)が計画している。環境アセスメントは、大規模な開発事業などを行う場合、周辺環境の影響を事業者自らが調査・予測・評価を行い、県民や首長らの意見も聞いて環境影響の低減を図る手続き。同社は令和5年度に方法書でも技術審査会の審査を受け、寄せられた指摘や意見も踏まえ準備書をまとめ、今年2月には説明会を開催し、3月まで住民意見を受け付けた。
 この日の審査会では、手続き状況や準備書に対する意見の概要と事業者の見解に加え、大船渡、釜石の両市長意見が資料として示された。大船渡市長意見では総括的事項に加え、大気環境、水環境、動植物・生態系、景観、県立自然公園、農地等、森林、土砂災害防止に加え、工事関係車両などへの対応を求めている。
 総括的事項では「市民の理解が必要不可欠」とし、地域住民らと十分なコミュニケーションを図り、事業の情報共有を行うなど相互の意思疎通を求めている。環境影響に関しては「積極的かつ分かりやすく示すこと」としている。
 さらに、水源保全や土砂災害、火災リスクをはじめとした周辺地域への悪影響を懸念する市民の意見がある状況も指摘。さらなる説明や、意見交換を求める声にも触れている。
 そのうえで「誠実に理解の醸成を図り、事業者としての説明責任を果たすとともに、こうした状況や(大気環境や水環境など市長意見の)記載内容に適切な対応ができないと本市が判断した場合には、本事業計画を是認しない可能性がある点に留意すること」とし、準備書の前段階となる方法書への意見から、より踏み込んだ内容となっている。
 審査会では、工事用車両が走行する際の騒音やイヌワシの生態、杭の設置に伴う草地の環境変化といった観点から、各委員が今後の対応策や環境影響の認識について質問。イヌワシに関しては「影響を低減するならば設置するパネルの数を削減してほしい」との意見もあった。
 住民理解に関しても、複数の委員が取り上げた。自然電力側も「一方的に説明して終わりにしないように考えており、現段階で明確な方針はないが、常に方策を考えている」との認識を示した。委員からは、漁協や住民組織などとのヒアリングの重要性を挙げる発言も寄せられた。
 自然電力側は今後、今回の意見も踏まえながら評価書作成を進め、一般的には、評価書の公告・縦覧などを経て、工事着手となる。ただし、今回の事業は土地所有者である市と事業者が締結した停止条件付きの土地賃貸借契約に基づき進められるため、市当局の賃貸可否判断が重要となる。