2025参院選岩手選挙区/議席 立民維持か、自民奪還か 横澤氏…共闘態勢で幅広く浸透 平野氏…保守票固め徹底し追う

▲ 議席奪還へ支持を訴える平野氏=大船渡市(4日)
▲ 気仙でも幅広く浸透する横澤氏=陸前高田市(7日)

 第27回参議院議員選挙岩手選挙区(改選数1)は、20日(日)の投開票まであと2日となった。全県では立憲民主党の現職・横澤高徳氏(53)が「野党共闘」態勢で幅広く浸透して先行。自民党の元職・平野達男氏(71)が支持基盤を固めながら懸命に追いかける展開で、与野党対決を軸に戦いが繰り広げられている。気仙でも、横澤氏が自民票を切り崩しながら集票を加速させ、平野氏は組織力を生かして従来の保守票を固めつつ無党派層の取り込みも図っている。参政党の新人・及川泰輔氏(46)は同党支持層を中心に集票し、保守票も集めている。NHK党の新人・吉田博信氏(59)は伸び悩む。まだ態度を決めていない有権者も一定数おり、情勢は最後まで流動的だ。(2025参院選取材班)


 横澤氏は、無所属の野党統一候補として初当選した6年前の前回選同様「野党共闘」態勢を構築。公示後、盛岡市から始まった遊説は15日までに全33市町村を1周し、その後も各地で物価高騰対策、農林水産業の立て直しなどを訴えている。
 街頭演説には、達増拓也知事、小沢一郎衆院議員(岩手3区)、木戸口英司参院議員(岩手選挙区)に加え、政治資金の問題を巡って立民県連との距離がある階猛衆院議員(岩手1区)も応援に入っている。野党支持層を固め、無党派層にも浸透するなど、支持を伸ばしている。
 気仙では、横澤氏後援会気仙支部(林﨑幸正支部長)の市町議が支援。事実上の与野党対決となった一昨年9月の知事選で、自民、公明両党が支援した無所属新人を下し、県政史上初の5選を果たした達増氏の気仙における支持層の受け皿にもなることから、優勢との見方が広がる。会長が大船渡市内に住む県身体障害者福祉協会をはじめ、福祉関係者も支える。
 16日には、選対本部長の木戸口参院議員が陸前高田、大船渡両市を巡り、「国難的危機に何もしない無為無策の自民党に対し、立憲民主党、そして横澤候補は具体的な政策を打ち出している。岩手から政治を変えよう」と訴えた。
 後援会支部の幹部は「横澤候補は物価高騰対策や、1次産業の振興策に加え、福祉分野にも非常に熱心。気仙などの現場の声を拾おうとする姿勢を伝えていく」と述べた。
 6年前、横澤氏に敗れ、議席奪還を狙う平野氏は「最後の選挙だ」と、背水の陣で挑んでいる。昨年12月の立候補表明以来、県内各地を細かく回り、1次産業、建設、医療・福祉・介護など幅広い分野で課題解決を訴えてきた。
 選挙戦序盤は、沿岸や県北の衆院2区の市町村を地盤とする鈴木俊一衆院議員も平野氏に同行し、連携して支持拡大を図った。序盤から劣勢が報じられる中で、県内をくまなく歩く草の根戦術を展開。令和3年の衆院選岩手3区、4年の参院選でいずれも立民現職を破った原動力である「どぶ板」選挙を徹底し、連日、数十カ所で街頭活動を重ねている。
 平野氏は農水省出身、初代復興大臣という経歴を強みに、農業改革や防災強化を県民にアピール。気仙3市町では、鈴木衆院議員の地区後援会(鎌田和昭会長)が中心となって支持拡大に動き、党所属県議や各市町議が足元を支える。18日には期間中最後となる気仙入りも予定しており、震災と林野火災からの復興、なりわい再生などを訴える。
 同後援会では今年、50代以下を中心とする青年部を立ち上げ、これまでにはない若年層や無党派層からの票の取り込みにも力を入れるが、懸念するのは参政党の存在だ。後援会幹部は「今回、参政党を支持する人は少なくない。従来の保守票がどれだけ食われるかも気がかりだ」とにらみを利かせ、「いずれにせよ厳しい戦いだが、なんとか挽回するしかない」と気を吐く。
 参政党の及川氏は、同党支持者の多くを取り込んでいる。これまで計3回、気仙入りしており、同氏は「沿岸部や盛岡、奥州などを回り、都市部はまだ反応が薄いと感じるが、それ以外では非常に感触がいい」と手応えを口にする。全国的に勢いを増している同党。及川氏もSNSを駆使した選挙戦を展開しながら、党への追い風も受けて存在感をアピールする。
 NHK党の吉田氏は、気仙での表立った選挙活動が見えない。与野党対決と参政党の勢いに埋没しており、苦しい展開となっている。