被害木 利活用の可能性は 大規模林野火災 延焼区域で現地検討会 伐採や加工に向けた課題も共有(別写真あり)

▲ 被災木を実際に伐倒し、今後の利活用などについて意見交換

 大船渡市大規模林野火災による被害木の利活用を見据えた地域材利用促進セミナーと現地検討会が24日、同市内で開かれた。県による県産木材供給連絡会議と気仙地方林業振興協議会の共催で、現地検討会は発災以降では初の取り組み。森林被災面積は3400㌶に及び、伐採や搬出、再造林など膨大な規模での復旧作業が見込まれる中、関係者は伐採時の注意点に加え、市場供給の可能性や課題などに関する認識共有を図った。(佐藤 壮)

 

 連絡会議は、県産木材の円滑・安定的な供給体制構築を目的とし、東北森林管理局盛岡森林管理署や県国有林材生産協同組合連合会、県森林組合連合会、ノースジャパン素材流通協同組合などで構成。気仙地方林業振興協は気仙3市町に加え、管内の林業振興関連団体などが名を連ねる。
 被害木に関しては、山林復旧に向け、供給の円滑化や被災程度に応じた価値の高い利用が求められている。検討会は関係者間で情報共有を目的に開催され、県や構成団体の関係者ら計約70人が出席した。
 大船渡町の市魚市場で開かれたセミナーでは冒頭、県農林水産部の菊地明子技術主幹兼林業・木材担当課長が「被害木の利用を進め、一日も早い復旧・復興に寄与したい」とあいさつ。関係機関からの状況報告や県林業技術センターによる被害木の強度試験の取り組みなどの説明は、報道陣に非公開で行われた。
 現地検討会は、赤崎町長崎地域の山林で行われた。50年~80年生のスギと63年生のアカマツが伸び、気仙地方森林組合が共有林から令和5年に立木買い取りで購入し、8年度以降に伐採を予定していた。
 根元から4~5㍍の焼損が見られるが、火の流れによって同じ木でも焼損の高さには差がある。7月以降、樹幹が茶色に変色する木も見られるようになった。一般的に、幹の表面が360度焦げた場合は、水分が木全体に行き渡るのが難しくなり、枯れることが多いという。
 県による被害木調査では、先端まで黒く焦げている場合は「激」、根元から2㍍を超える延焼は「大」、2㍍以下は「中」、地表から30㌢程度は「小」としている。この日は「大」の状況にあるスギを、県伐木技術指導員を務める気仙地方森林組合の細川稔さん(65)が実際に伐倒した。
 細川さんは「健全木よりも乾燥が進んでいる状況を考慮し、チェーンソーを入れた。被害木は粘りがなく、倒す方向が不確定になりやすい。炭化していることで、チェーンソーの刃が切れにくくなりやすいことによる手間も増える」と話し、注意を促した。
 参加者を前に、釜石地方森林組合の高橋幸男参事は「焦げの長さの見極めに加え、製紙パルプや製材用など、どこに仕向けることを目標にするかで対応が変わってくる。切る前に、関係者が共通認識を持っておくことが大事になるのでは」と語った。釜石市で発生した林野火災の復旧経験も踏まえ、沿岸部の海洋環境にも配慮して沢沿いに広葉樹を植える対応やシカの食害対策にも言及した。
 現地では伐倒した木を目にしながら、参加者が今後の製材対応などに関して意見を出し合う時間も。「乾燥材並みに乾いている状況が、ネックになる場合がある」「製紙の場合は炭化物の付着は『だめ』と言われている。玉切りをした際に付かないことが保証できるかどうか」「バイオマス利用では、これまでの受け入れ状況からも問題ない」といった声が寄せられた。
 大規模林野火災に伴い市が設置した林地再生対策協議会の第1回会合は、5月に開催。被災森林面積は調査中ながら、2月19日に三陸町綾里で出火した火災分も含め約3400㌶で、森林復旧補助事業の対象となる人工林は約1700㌶に及ぶ。次回会合で、森林整備の方向性や整備区域などを協議する見込みとなっている。
 第1回会合で示された令和10年度までを期間とする森林災害復旧の計画概要書によると、8年度からの跡地造林は135㌶で、被災人工林と造林計画の面積に大きな開きがある。作業規模拡大や計画期間延長に加え、利活用を見据えた迅速な伐採対応にも関心が高まっている。