災害対応のモデルケースへ 大規模林野火災 青年会議所が「初動ふりかえり」

▲ 大規模林野火災の初動について振り返る参加者ら

 大船渡市の大船渡青年会議所(鎌田智理事長)による「大船渡市大規模林野火災初動ふりかえりプロジェクト」は26日、大船渡町のキャッセン大船渡で開かれた。全国の災害対応のモデルケースとするべく、関係者や避難生活を送った地元住民が、避難所などにおいて良かった対応や課題を共有した。(齊藤 拓)

 

 同プロジェクトは、大規模林野火災の事例が全国で災害対応を検討するうえでの資料になるとして、成果を後世に継承する狙い。火災発生から5カ月が経った現在まで、初動対応の振り返りが十分に行われてこなかったことを踏まえ、同会議所が主催した。
 気仙の青年会議所会員や、火災発生に伴い避難した地元住民など約30人が出席。はじめに、災害における避難をテーマに、岩手大学地域防災研究センターの福留邦洋教授によるセミナーが行われた。
 福留教授は昨年1月の能登半島地震を例に挙げ、被災地内の1次避難先から被災地外へ2次避難するも、なじめずに被災地の自宅などへ戻る人がいたことを説明。「指定避難所に避難している人だけを対象に対応をするのではなく、やむをえない事情で在宅避難する人や自主避難先にいる人も同じく支援することが大事だと、能登半島地震で改めて認識された」とした。
 このあと、参加者らが3班に分かれて、火災発生時の避難行動、ボランティア活動、避難生活について、振り返りと意見交換を行った。
 このうち、避難生活について意見交換を行った班では、参加者が避難所での生活や運営方法について、良かった点と課題点を共有した。
 中でも、避難所に届けられた支援物資に関しては多くの参加者が、食料品や段ボールベッドのほか生理用品や口腔ケア用品が準備されていた点を、「東日本大震災の経験が生かされた。不足なく物資が集まった」と評価した。
 一方、避難生活を送った住民からは「何が届いたのかという報告が、全ての避難者に伝わりきっていなかった」という指摘も。このほか、「一緒に避難したペットから離れられず、大変な思いをした人もいた」「避難所に行こうとも思ったが、家族に乳幼児がいるので迷った」という声もあり、指定避難所に避難できない世帯への対応も話題に上った。
 課題点に対する改善策も考え、物資の配布については「届いた物資を館内放送で知らせる」「在宅避難者専用の物資配布場所を置く」といった案を出し合った。
 鎌田理事長は「避難者の声を聞いていく中で、自分たちがこの声を残していかなければと思い、プロジェクトを始めた。これをもとに、未来の災害につながる活動をしていきたい」と話した。
 同プロジェクトは8月以降、振り返りの成果レポートを行政などに提出する予定。