〝すぐそこにクマ〟の恐怖 民家周辺でも目撃多数 気仙 警戒怠らず常に注意を(動画、別写真あり)

▲ 猪川町の住家に現れ、防犯カメラに映し出されたクマ

 気仙でも6月に2件の人身被害が発生するなど、県内では死亡事故を含むツキノワグマによる人身被害が多発。住家付近や学校の敷地内などでも目撃例が相次いでいる。「窓を開けたら目の前にクマがいた」という証言もあり、多くの住民が「クマは山の中だけではなく、日常の隣にいる」と意識を新たにして行動することが大事だ。
 民家の玄関前に現れたクマの写真=下段=は、大船渡市猪川町富岡の紀室綾子さん提供の映像から。自宅に設置された防犯カメラに、ツキノワグマがはっきりとらえられていた(6月28日午後7時3分撮影)。映像だけでは正確な大きさの判断はできないが、映り込んだ物体などと比較するに、「成獣」と呼ぶにはやや小さく、大型犬より少し大きいぐらいに見える。
 このクマは、車がとまっている住宅敷地脇の木立から突然飛び出し、玄関の前まで突進してきたあと、小走りで引き返して今度は縁側へと向かい、そのまま映像からフェードアウトする。このとき家の人々は出払っていたが、在宅中で玄関や縁側の窓を開けていたら、クマと至近距離で鉢合わせしていた可能性が高い。
 紀室さんは、「帰ってきて車を降りた途端、『富岡でクマが目撃されました』と防災無線が聞こえ、すぐにパトカーが来て『この辺りでクマが出たそうですが』と尋ねられた。あとから、私が戻ったのはクマ出没のわずか15分後と分かり、映像を確認して『笑い事じゃない』と…。その時はどこか現実味がなかったけれど、北海道で新聞配達員の方がクマに襲われ亡くなったというニュースを見て、本気で震え上がった」と振り返る。以前から「周囲の草刈り、生ごみ等の屋内保管、数カ所にセンサーライトを設置」といった対策はしていたが、これらを継続し、さらに気をつけたいという。
 県は今月4日、県内全域に「ツキノワグマの出没に関する警報」を発表した。クマ出没に対する注意喚起を強化し、県民らに被害防止の意識を高めてもらう狙いだ。
 人里では、▽電気柵を設置する▽庭先果樹は適期が来たら速やかに収穫する▽農地周辺のやぶを刈り払い、見通しの良い環境を整備する▽廃棄野菜や生ごみ、コンポストの管理を適切に行う▽屋外やクマが侵入できる納屋に果物、穀物、ペットフードなどを保管しない▽家屋や倉庫も施錠する──などの対策が呼びかけられている。
 東北森林管理局によるブナの結実予測をみると、令和7年度は岩手を含む5県全てで「大凶作」の見通し。ブナの実を主な食料とするクマが人里付近に引き続き出没すると考えられることから、一人一人の被害防止意識がますます重要となりそうだ。