被災建物の滅失登記進む 盛岡地方法務局と県土地家屋調査士会が連携 大規模林野火災 所有者の負担軽減へ

▲ 三陸町綾里の港地域で行われた職権滅失登記に向けた実地調査

 大船渡市大規模林野火災を受け、盛岡地方法務局(佐々木賢局長)と県土地家屋調査士会(佐藤保会長)の連携による被災建物の「滅失登記」に向けた実地調査が28、29の両日、赤崎町と三陸町綾里で行われた。本来は所有者が申請しなければならないが、時間や費用の負担軽減を図るといった目的から、法務局の職権で実施。スムーズな住宅再建や土地の再活用に向け、炎天下で地道な確認作業が進められた。所有者には1~2カ月程度で滅失登記に関する通知を出すことにしている。(佐藤 壮)


 29日は、法務局職員と土地家屋調査士が3人一組になって5班を編成し、被災地を回った。厳しい暑さが続く中、住宅地図や法務局側が用意した資料を目にし、公費解体が進む現地の様子を見定めながら丁寧に判断していった。
 県土地家屋調査士会の藤村慶太常任理事は「建物が焼失しているという判断を、間違わないで行うことが大事。ここの土地に建物があったということを瞬時に判断しないといけないが、われわれの情報ツールなどで確認できる。今回の火災は大規模で広範囲にわたるほか、(飛び火で)被災した建物が点在し、一つ一つ丁寧に確認する難しさがある」と話した。
 盛岡地方法務局の藤原勝美統括登記官は「間違ってはならず、そのために調査士の方々の知見を借り、より精度を高めている。所有者に申請義務があるが、実際に行うとなれば費用も時間もかかる。スピード感を持って対応することで、生活再建に貢献できるのではないか」と語った。
 調査では、土地家屋調査士会側が事前にドローンで上空からの写真を撮影していたことで、境界の確認などがスムーズに進んだ。当初は30日も予定していたが、2日間で終了した。
 今回の対象は住宅が中心で、登記されている約80棟。同法務局では大規模林野火災の甚大な被災状況に加え、被災した住民負担軽減や生活再建支援を目的とし、法務局の職権による滅失登記実施を決めた。
 実地調査にあたっては、土地家屋調査士会と協定を締結。土地や建物に関する調査や測量技術の専門能力があるほか、平時も所有者から代理手続きの依頼も受けている。申請する側と審査する側が連携することで、迅速かつ確実な手続きを見据える。
 協定書の調印式は、今月18日に盛岡市内で開催。報道でも大きく取り上げられ、住民の関心が高く、調査に協力的だったことも、予定よりも早く終了した一因として挙げられるという。
 一般的に、所有者自ら申請を行う場合、法務局に出向くだけでなく、必要な書類の取り寄せなどを求められて数週間を要するほか、依頼時には費用が発生する。滅失登記を行わないと、住宅再建をはじめ土地を再利用する際の金融機関による融資などで支障が出る場合があるという。