カムチャツカ震源巨大地震 大船渡で40㌢の津波観測 警報発令で緊張走る 人的被害なし 気仙両市で1791人避難
令和7年7月31日付 1面

30日午前8時25分ごろ、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震が発生し、本県を含む太平洋沿岸などの広い範囲に津波警報が発令された。気象庁によると、気仙では大船渡で午後4時23分に40㌢の津波を観測。警報発令に伴い、大船渡、陸前高田両市の3902世帯8662人に避難指示が出され、同日午後6時までに、両市合わせて最大1791人が避難した。人的被害の報告はない。警報は同7時現在、解除されていない。梅雨が明け、夏の観光シーズンに入っている中、遠地地震による予期せぬ津波警報に緊張が走った気仙では、水産業などへの被害も懸念されている。(7面に関連記事)
気象庁によると、地震の規模を示すマグニチュード(M)は8・8と推定される。同庁は同日午前8時37分、北海道から九州地方の太平洋側に津波注意報を出し、同9時40分、北海道太平洋東部から和歌山県沿岸までの広い範囲を津波警報に切り替えた。
大船渡では同日午前10時48分に津波の第一波を観測し、最大波は午後4時23分の40㌢。このほか、久慈港で1・3㍍の津波を観測するなど各地に到達した。
気象庁は海外で発生した地震に伴う津波警報は継続時間が長くなるとして、解除まで半日から1日程度かかる場合があるとしている。県は継続的に救助を必要としている状況を踏まえ、気仙両市を含む県内12市町村に対し、災害救助法の適用を決めた。
気仙に津波警報が発令されたのは、令和4年以来3年ぶり。海外の遠地で発生した地震により津波警報が出たのは、平成22年のチリ中部沿岸の地震以来15年ぶりとなる。
大船渡市

市魚市場2階の駐車場は近隣事業所の車両やフォークリフトであふれた(30日午前10時5分)=大船渡市
大船渡市では、津波注意報発令を受け、沿岸部の地域住民が続々と避難行動をとった。大船渡町台地内に自宅があり、14年前の東日本大震災で大規模半壊に見舞われた自宅に暮らす田中定男さん(89)は、妻と米国から遊びに来ていた娘家族とともに近くの台公園に出向いた。「どの程度の津波か分からなかったが、訓練通り逃げた」と話した。
町内では、大船渡湾に面する水産加工会社の従業員らが、沿岸部の社屋や宿舎から下平公園に避難。炎天下とあって、近隣住民も含め合わせて約60人が、飲み物を持ち寄り集まっていた。
市は災害警戒本部を立ち上げ、13カ所に避難所を開設。最大で1034人が避難し、午後4時現在、495人が身を寄せている。
注意報発令に伴い、沿岸部の防潮堤では、市や県が自動閉鎖システム運用して陸閘を閉鎖。市魚市場2階の駐車場には、近隣事業所関係の車両やフォークリフトが多く並び、3階部分の建物内などに約60人がいる時間帯もあった。防潮堤の階段から高台への移動を促し、観光客に関しては、市関係者が避難所に誘導する対応が取られたという。
盛町のサン・リアショッピングセンターでは、警報発令後の午前10時20分に全店を休業。津波避難ビルとして、その後も立体駐車場の屋上は開放を続けた。マイヤは大船渡店と赤崎店で営業を見合わせた。大船渡町のキャッセン大船渡の各店も営業を取りやめ、避難対応にあたった。
国道45号は大船渡町・旧おさかなセンター前~盛町・大船渡警察署前などで通行止め措置が取られた。三陸鉄道やJR大船渡線BRT、県交通バスはいずれも運休。同署では、免許証などに関する窓口対応を取りやめた。
赤崎町のフレアイランド尾崎岬付近から海の様子を眺めていた住民は、湾口防波堤付近で津波到達によるものと思われる白波を確認。「養殖施設が動いたり、沈んだりしている」といった声が聞かれ、漁業への影響も懸念される。
陸前高田市
陸前高田市は津波注意報発令と同時刻に災害警戒本部を設置。警報への切り替えに伴い、午前9時40分に災害対策本部に移行した。
高田、今泉地区のかさ上げされたエリアを除く津波浸水想定区域1067世帯2524人に避難指示を出した。17カ所に避難所を開設し、最大で757人が避難。午後4時30分現在、245人が避難所にとどまっている。
国道45号は気仙町~米崎町間の延長11・3㌔で全面通行止めの措置がとられている。
高田町の商業施設「アバッセたかた」代表法人の高田松原商業開発協同組合は警報発表を受け、そばにある本丸公園への避難を開始。㈱山十の伊東亜希子専務取締役(43)が旗をもって先導し、来店客や従業員とともに高台へ急いだ。
花巻市の関美保子さん(44)は、小学生の子ども2人を含む家族4人で高田松原海水浴場に向かう途中に注意報の発令を受け、高田町のまちなか広場に移動。近くの店の従業員から避難を呼びかけられ、本丸公園に逃げた。
関さんは「初めて高田松原での海水浴を計画してきたが、こうした状況になり、どうしようかという気持ち。何事もなければいい」と不安をのぞかせた。
同海水浴場を運営する市観光物産協会の職員は、10人弱の海水浴客を避難させたあと、監視員らとともに高田町の夢アリーナたかたに向かった。気仙町の道の駅高田松原、震災津波伝承館は警報の発表と同時に来場者の避難を促し、速やかな館内の点検、施錠のあと、気仙小学校に徒歩などで避難した。
同協会の桒久保博夫事務局長は「海水浴場オープン前の時間に注意報が発令されたので、まだお客さんが少なく、迅速に対応できた。サイレンの音を聞くとやはり緊張が走る」と真剣な面持ちで話した。