日本遺産「みちのくGOLD浪漫」大船渡市の追加を認定 構成文化財に吉田家住宅(陸前高田)も(別写真あり)
令和7年8月2日付 1面

陸前高田市を含む岩手、宮城両県の6市町で構成する日本遺産「みちのくGOLD浪漫」に、大船渡市の追加が決まった。市内ではこれまで、民間で発足した組織が中心となり、機運醸成を図ってきた。認定されたストーリーを物語る構成文化財として新たに、陸前高田市の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」が加わったほか、みちのくGOLD浪漫としては重点支援地域にも選定され、構成市町が連携してのさらなる充実が期待される。(佐藤 壮、高橋 信)

陸前高田市の構成文化財に追加認定された「旧吉田家住宅主屋」
追加認定に向けては「大船渡市を『日本遺産の市』にする市民運動実行委員会」(甘竹勝郎会長)が昨年5月に発足し、市では市民意識醸成の動きを踏まえ、取り組みを進めてきた。今年3月に「みちのくGOLD浪漫」推進協議会(宮城県涌谷町)を通じて、当市の追加を含めた変更申請が文化庁に提出された。
「みちのくGOLD浪漫」は令和元年5月に日本遺産に認定されたストーリーで、これまでの構成市町は、宮城県涌谷町、気仙沼市、南三陸町、石巻市、岩手県平泉町、陸前高田市の6市町。国内屈指の産金地帯に築かれた独自の文化や信仰・産業の魅力を盛り込んだ六つのストーリーに細分されている。
大船渡市の構成文化財は、約1億年前の海底火山活動で原型が形成され、金鉱脈生成の地質史を物語る「今出山」と、海底火山の活動が活発化したことを物語る痕跡が各所に見られる「碁石海岸」が、地質時代などの背景を知るストーリーに組み込まれる。
明治~昭和にかけての大規模鉱山開発のストーリーとして「今出山金山跡」も加わる。さらに、現代につながる金と人々との縁によって生み出された文化のストーリーとして、「大なる入り江サン・アンドレス─大船渡湾の風景─」も構成文化財となる。
実行委員会は1日に臨時役員会を開催し、追加認定の情報を確認。出席者による万歳やくす玉を割るなどして喜びを分かち合った。
甘竹会長は「皆さんのご協力のおかげ。外国につながる海のストーリーなど、他の構成市町に負けない取り組みをしていきたい」と話す。同実行委は今後、推進組織として活動を展開することにしている。
渕上清市長は「民間からの活発な活動に感謝申し上げる。市としても積極的に取り組んでいきたい」としている。
陸前高田市から新たに構成文化財となった旧吉田家住宅主屋は享和2(1802)年に建てられ、藩政期における気仙郡の政治拠点、または宿所として使用された。地元では「大庄屋」として親しまれ、大事に保存されてきたが、震災で全壊。県立博物館学芸員や県外の大学関係者らが被災部材を回収するなどして復旧に当たり、今年5月に開館した。
市教委の山田市雄教育長は「玉山金山を含む当市の産金の歴史やそれに関連するストーリーが注目される契機となり、大変喜ばしいこと。認定を機に観光振興にもつながるような活用を検討する。また日本遺産に大船渡市も加わったことは大変心強く、連携しながら気仙一体となってみちのくGOLD浪漫の価値をPRしていきたい」と見据える。
「みちのくGOLD浪漫」全体としても、連携のあり方が他地域のモデルになるとして、新たな「重点支援地域」に選ばれた。補助事業や情報発信の優遇などが見込めるといい、認知度向上や産業振興にもつながる活動の活性化が期待される。