林野火災寄付27億円超に 災害義援金、見舞金、ふるさと納税の総額 発災から5カ月過ぎても途切れず
令和7年8月7日付 1面

大船渡市大規模林野火災に伴い、市に寄せられた災害義援金と同見舞金、ふるさと納税と企業版ふるさと納税による寄付の総額が27億円を超えた。2月26日の発災から5カ月が経過しても、各方面から寄付の申し出が続く。既存の支援制度だけでは手が届きにくい実態も浮かび上がる中、柔軟な活用の行方に関心が高まっているほか、寄付を通じて生まれた企業などとのつながりも注目される。(佐藤 壮、4面に関連記事)
市がまとめた、4日午前9時時点での義援金、見舞金、ふるさと納税災害支援寄付受け付けの内訳は別表の通りで、総額では27億4091万8439円に達した。義援金は、県が集約した分も市に寄せられている。
このうち、義援金は7月上旬段階では14億円台だったが、2億円以上増えた。3月から始めた募金活動を集約し、まとまった金額を寄せる団体だけでなく、先月末以降は、全国メディアで被災地の様子が取り上げられたことから寄付件数が再び増えている。
渕上清市長は「多くの方々が、林野火災について心配していることを切に感じている。思いを行動にして、市に寄せていることに対しては感謝しかない。しっかりと活用し、できるだけ早く、さまざまな再生・再建に向かっていきたい」と話す。
義援金は4~6月に配分委員会を開催し、11億2480万円の配分先が決定し、送金が進められた。このうち、全壊世帯に対しては1200万円で、住家を購入、再建する際の加算は600万円となっており、この他にも半壊以下や、東日本大震災の被災状況を考慮した配分となった。
次回の配分委員会は今月以降に開催予定。検討事項として▽被災したコミュニティー(綾里地区、蛸ノ浦地区)に対する配分▽被害を受けた協同組合などへの配分──を挙げる。
見舞金やふるさと納税は、いずれも市の一般財源となる。見舞金は8年度以降も柔軟に活用できるよう基金としており、このうち2億4400万円を被災者支援事業に充てている。企業版ふるさと納税も、4400万円を活用した。
市は引き続き、新たな支援策の実施に向けて準備を進める。延焼面積は平成以降の林野火災では最大となる約3370㌶に及び、被災住家は90棟でこのうち全壊は54棟。倉庫などの非住家は136棟で、全壊は121棟。農業、水産業、商工業など現在市が把握している産業分野の被害額は計28億9382万円に上るなど、被害は多方面に及ぶ。
住宅再建や漁業、農業分野の支援策、観光回復事業などはすでに実行に移されている一方、膨大な面積に及ぶ林地再生は、緒に就いたばかりの状況。国、県からも支援を受けながら進めるが、市に対して一定の負担割合があり、財源確保が課題となっている。
企業版ふるさと納税は、国が認定した自治体の地方創生プロジェクトに対し、市外に本社のある企業が寄付すると、最大で寄付額の約9割で法人関係税の軽減効果を受けられる。市は寄付に合わせて、ふるさと企業アンバサダーを委嘱し、パートナーシップ構築を図りながら、市のイメージアップなどを見据える。
同アンバサダーは現在、71事業者が任期中にある。このうち、56事業者が大規模林野火災の支援に対する寄付が縁で委嘱を受けた。市は各事業者に掲示してもらうことで大船渡の認知度向上につなげようと、さまざまなステッカーを用意するなど工夫を重ねる。
復旧・復興には、中長期的な財源確保が不可欠。より多くの企業から支援を得ながら関係性を構築するだけでなく、来年以降も継続的に支援を得られる体制を築くことができるかが鍵となる。企業側が選択できる寄付目的には子育て支援なども設けられている中、支援が他分野に波及するかも注目される。