養殖施設約50台に影響か 気仙 カムチャツカ半島地震津波 各漁場で復旧作業続く
令和7年8月8日付 7面

先月30日にロシアのカムチャツカ半島付近で発生した巨大地震に伴う津波で、気仙沿岸では、カキやホヤなどの養殖施設約50台で被害や影響が確認されたことが、各漁協による調査で分かった。養殖生産物への被害は今月7日時点で報告されていないが、養殖施設のロープが切れたり、海中のブロックが移動するなどの被害が複数あった。すでに復旧作業を終えた漁場もあるが、まだ調査が実施できていない場所もあり、被害の全容把握までは時間がかかりそうだ。(菅野弘大)
この地震は、先月30日午前8時25分ごろ、ロシア・カムチャツカ半島付近で発生。地震の規模を示すマグニチュード(M)は8・7で、気象庁は同8時37分、北海道から九州地方の一部を除く太平洋沿岸に津波注意報を発表した。
同9時40分には、北海道東部から和歌山県までの沿岸で津波警報に切り替え、大船渡では同10時48分に津波の第一波を、午後6時には最大波40㌢を観測した。津波警報は同8時45分に注意報となり、翌31日午後4時30分に解除された。
大船渡市漁協管内の養殖施設では、海底に沈めているアンカーブロック(3㌧)が動いたことに伴う養殖施設の移動やアンカーロープが切れる被害が確認された。被害施設はいずれもはえ縄式で、末崎、大船渡、赤崎各支所合わせて17台となっている。
津波とみられる白波が目撃された大船渡湾口防波堤の末崎町側・片頭漁場では、カキ養殖施設7台が影響を受け、今月2日に管轄する養殖組合員らが作業船で現地に向かい、復旧作業を完了させた。津波が何度も押し寄せたことで、ロープが伸び縮みを繰り返したとみられ、作業した関係者からは地形的な問題を指摘する声が聞かれたほか、津波が湾口防波堤に到達した際に発生する〝うず〟を被害の原因とする見方もある。
このほか、蛸ノ浦漁場と珊瑚島西漁場で各3台、獅子鼻漁場と珊瑚島漁場で各2台のカキ養殖施設が被害を受け、ダイバーを投入するなどして復旧を進めている。同湾口防波堤の赤崎町側・藤河原漁場と、末崎町・門之浜湾内では目立った被害はないとみられる。
市漁協では今後、天候や波の状況を見ながら、ワカメ養殖施設などがある湾口防波堤外の被害調査を進めていく予定だが、「何らかの被害はありそうだ。津波による影響は仕方ない部分もあるが、復旧作業も含めて、まずは人命第一の意識を共有している」とする。
市内ではこのほか、三陸町綾里の綾里漁協管内で、綾里湾にあるホヤ養殖施設1台のいかり綱が切れる被害があった。越喜来、吉浜両漁協管内における被害報告はない。
陸前高田市の広田湾漁協管内では、米崎小友支所の養殖いかだの連結ロープが切れるなど、29台に影響が確認されたが、すでに復旧済みという。
気仙沿岸では、令和4年1月に南太平洋のトンガ沖で起きた海底火山噴火による津波で多数の養殖施設や生産物が被害を受けた。養殖施設は共済制度に加入しているが、津波の場合は「全損」でなければ補償が出ないため、各漁協などが実費負担で対応した経緯があり、幅広い状況を想定して柔軟に対応できる支援の充実が求められる。