三笠丸船団 いざサンマ漁へ 出船式で安全と大漁祈願 林野火災復興の思いも胸に(別写真あり)
令和7年8月9日付 1面

大船渡市赤崎町の鎌田水産㈱(鎌田仁社長)が所有する大型サンマ漁船6隻の「出船式」は8日、大船渡町の同市魚市場で開かれた。南側岸壁に並んだ199㌧の三笠丸船団6隻が、多くの市民らに見送られながら華々しく出港。サンマ漁の予報は今年も「低水準」との見通しだが「型は良い」との声も。2月の大規模林野火災からの復興も進む中、漁に臨む乗組員らは、水揚げ本州一の誇りと復興支援への感謝も込め「良いサンマを大船渡に」との思いで漁場となる公海へと向かった。(菅野弘大)
全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)は昨年から、サンマ漁の解禁日を公海に限定して8月10日に統一。同社では、漁解禁前に「出船式」を開き、大々漁と航海の安全を祈願し、漁に向けて大船渡を出港している。
すっきりとした青空から強い日差しが照りつける中、南側岸壁には数々の大漁旗に彩られた大型サンマ漁船6隻が集結。その勇姿を見送ろうと、多くの市民らが足を運んだ。
式であいさつに立った鎌田社長は「今年は大きいサンマが取れる予報で、期待して待っていてほしい。乗組員の皆さんには、頑張って漁をして、けがなく元気に帰ってきてもらいたい」とあいさつ。渕上清市長も「水産のまち大船渡をけん引していただいている。安全な航海で漁に励んでほしい」と激励した。
市議会の伊藤力也議長、大船渡魚市場㈱の千葉隆美社長も乗組員たちを鼓舞し、各船の漁労長6人に地元の子どもたちが花束を贈呈。船団を代表して、第十八三笠丸の髙橋昇司漁労長(66)が「安全操業を第一に、大漁と笑顔で大船渡港に入港したい」と決意を述べた。
歌謡ステージに続き、同社の鎌田和昭会長の合図で、青の集魚灯を点灯させた6隻が順番に離岸。大漁旗とカラーテープが風になびく中で大海原へと繰り出し、集まった関係者らも安全な操業を願いながら「いってらっしゃい」と手を振り続けた。
出港した各船は北海道に寄港し、漁場となる公海へと向かう。今月下旬の初水揚げを目指し、〝初物〟は31日(日)開催の「大船渡市初さんまうにアワビ帆立かきホヤわかめ祭」で無償提供する。
また、今年は特別な思いを胸にサンマ漁に向かう人々もいる。
第十一三笠丸の乗組員・柴田修幸さん(64)は、大規模林野火災で三陸町綾里小路地域で暮らしていた父・𠮷郎さんを亡くした。「起きてしまったことは仕方ないし、いつまでも引きずっているわけにはいかない。現実を受け止めるのは難しいことだが、何とか気持ちを切り替えて、ほかの船より多くサンマを取って、大船渡に水揚げしたい」と前を向く。
綾里在住の第三三笠丸・熊谷陽介漁労長(41)は「今年は魚体が良いとの予報で、7月に釧路で水揚げがあるなど、例年にないことが続いていて、われわれも期待している」と見据え、「林野火災では全国の方々に助けられた。その恩返しではないが、少しでも多くサンマを水揚げして、大船渡が復興している姿を見せたい」と意気込んだ。
国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所が発表した、今年8~12月における道東~三陸海域などでのサンマ長期漁海況予報では、漁場は日本近海から離れた公海が中心で、来遊量は昨年に続き低水準の見通しだが、平均体重は昨年を上回る110~120㌘の予報で、近年では比較的大きめのサイズが期待される。
全さんまによると、昨年の全国の総水揚げ数量は、前年比58%増の3万8695㌧で、金額は同78%増の179億8163万円だった。
大船渡市魚市場でのさんま棒受網漁の水揚げは、数量が同46%増の5650㌧、金額は同50%増の27億8457万円。本州に近い三陸沖にも漁場形成があり、地元漁船やサンマを取り扱う水産加工業者の強みも生かし、数量は10年連続、金額は13年連続で本州トップを維持した。