デマンド交通実証へ 11月から来年3月 コミュニティバス再編と合わせ
令和7年8月10日付 1面

住田町は11月から、町内の一部地域でデマンド交通(予約型乗合交通)の実証を開始する。本年度から令和11年度を期間とする地域公共交通計画に基づいたもので、町コミュニティバスの再編と合わせて実施。今月6日~8日にかけて町内5地区で住民説明会が行われて再編とデマンド交通導入に向けた素案が示された。住民の意見を集約したうえで運行計画を定め、来年3月まで利用者数や利便性の実証を行う。人口減少によって公共交通の利用者は減少する一方、高齢化が進行していることから交通利便性向上は急務となっており、実証を踏まえながら持続可能な公共交通形態を構築していく。(清水辰彦)
町内では、鉄路はJR釜石線が町の北東部に1駅あるのみで、主な公共交通は路線バスが担っている。路線バスは町内と大船渡市や陸前高田市、遠野市を結ぶように運行しているが、かつて民間のバス事業者が運行してきた路線では平成16年以降廃止が相次ぎ、現在は町がコミュニティバスを運行している。
ただ、人口減少や少子化、高齢化が進み、年々公共交通の利用者が減少する一方、町の負担は増えつつある状況で、高齢者の自動車事故も社会問題化しており、免許返納後も安心して暮らせるまちを実現する公共交通ネットワークの再構築が求められている。
こうした状況を踏まえ、町では人口減や少子高齢化に対応した持続可能な交通形態の実現を目指して地域公共交通計画を策定。計画では▽コミュニティバスを再編しデマンド交通を導入▽幹線交通の運行を維持し、町内外への移動のしやすさを向上させる▽交通空白地有償運送(公共ライドシェア)の導入促進▽交通交流拠点を整備し、にぎわいも創出する──など八つの事業を定めている。
計画に基づき、町では11月からコミュニティバスの再編とデマンド交通の実証を開始する。これに伴い、住民説明会を今月6日に下有住地区と大股地区、7日に上有住地区と五葉地区、8日に世田米地区で開催し、住民にコミュニティバス再編とデマンド交通導入の素案を示した。
案によると、コミュニティバスは現在の町役場─上有住駅間の「川口上有住線」を「世田米有住線」に、遠野駅─上有住集会センター間の「八日町遠野駅線」を「遠野住田線」にそれぞれ名称変更する。
遠野住田線では、終着点を従来の上有住集会センターから上有住駅までとし、北側に約15㌔延長。
「世田米有住線」は、これまで特定曜日に運行していた下有住と上有住の一部地域をデマンド交通とする。これにより、同線の便数は現在の1日上下8便から、上り4便、下り5便に変更となる。町役場と世田米の大股地区を結ぶ「役場中井線」は廃止し、デマンド交通を導入する。
デマンド交通の導入案では、有住地区を月・水・金曜日、世田米地区と大股地区を火・木曜日に運行。区域を定時で運行し、ルートは利用者の状況によって異なってくる。乗降場所は、自宅と町役場、住田郵便局周辺、世田米駅、住田地域診療センター、薬王堂を想定している。いずれの地域も各日上下3便を見込む。
上有住の五葉地区については、現在、地域として移動支援について検討を行っていることから、その取り組み状況や地域からの要望を踏まえたうえで導入を判断する。
説明会では、「病院の診察、薬局での待ち時間も踏まえたダイヤを」などの意見が寄せられた。町では各地区からの意見を集約したうえで素案を修正し、9月の公共交通会議を経て、修正案を住民に示す。
町住民税務課の鈴木絹子課長は「買い物、通院、通学など日常生活における移動手段を確保するため、少しでも使い勝手の良いものにしていきたい」と話している。