「古里への恩返しを」 陸上クリニックで指導 砲丸投げ・佐藤征平さん 震災で父亡くす(別写真あり)
令和7年8月11日付 6面

陸前高田市横田町出身の陸上男子砲丸投げ選手・佐藤征平さん(33)=店舗高値買取センター=による陸上クリニックは10日、高田町の夢アリーナたかたで開かれた。佐藤さんは14年5カ月前の東日本大震災で大好きな父を亡くしたが、家族の支えなどを糧に競技を続け、国内トップレベルのアスリートとして活躍。「今があるのは古里のおかげ。恩返しがしたい」との思いを持ち続け、実現した今回のクリニックで、市民らに熱血指導した。(高橋 信)
佐藤さんは高田高卒業後、陸上投てき種目の強豪として知られる国士舘大に進学。平成30年、令和元年の国体で2連覇、30年、令和2年の全日本実業団選手権を制し、3年の日本選手権大会で準優勝するなど輝かしい成績を持つ。
古里でのクリニックは、市スポーツ協会(及川満伸会長)が主催。市からの補助金を受け、中学生以上を対象に実施した。
佐藤さんは「投てき種目は、自分の体の筋肉をどれだけ上手に使えるかにかかっている」とし、体幹を鍛える重要性を説き、トレーニング法を伝授。終盤にはバーベルを使いながら円盤投げの動作を確認する練習を行い、館内には佐藤さんの熱の入った声が響いた。
大船渡高陸上部所属で、円盤投げ・砲丸投げの練習に励む佐藤希樹さん(2年)はマンツーマンの指導を受け、「フォームや力の伝え方など直さないとならないところを分かりやすく教えていただき、すぐに変化が実感できた。とても貴重な機会で、本当にうれしい。ぜひこれからも開催してほしい」と汗を光らせた。
佐藤さんは大学進学を控えていた時期に震災に遭い、市職員の父・正彦さん(当時55)を亡くした。家族思いの父が大好きで、失意の底に沈んだが、正彦さんが熱心に応援してくれた砲丸投げは辞めず、練習に真摯に取り組んできた。
大学や実業団では、国内トップレベルの選手として活躍。全日本実業団大会記録(18㍍20)を保持している。
砲丸投げに情熱を傾けながら、忘れていないのが古里への思いだ。「母をはじめとする家族や地域の方々に支えてもらった。自分も地元に貢献したい」。昨年12月に開催された奇跡の一本松マラソンには、妻でトライアスロン選手の佳子さん(31)=東京ヴェルディトライアスロン=と一緒に、市ゆかりのアスリートとして出場した。
「競技のスキルと知識を地域に還元する場を」と考えていた中、今回、クリニックが企画され、「自分にとってもありがたい機会でうれしい」と喜ぶ。「妻も指導をしたいとずっと言っている。いつか夫婦で皆さんと交流し、古里への恩返しにつなげたい」と熱心に話す。
佐藤さんのクリニックは夢アリーナたかたで、11日に小学4~6年生、17日(日)に同1~3年生を対象に行われる。