支援への感謝 直接伝えよう 市が10月、シンガポールに市民団派遣 今月下旬に参加者向け説明会
令和7年8月11日付 1面

- 陸前高田市は東日本大震災後、市内公共施設の建設などで手厚い支援を受けたシンガポールに対して直接感謝を伝えようと、10月に市民訪問団を派遣する。11日で震災発生から14年5カ月。長い道のりだったハード分野の復旧事業は今春ようやく完遂。この間の事業の推進を支えた同国に「ありがとう」を伝えると同時に多文化共生社会を学ぶ。今月下旬に希望者向け説明会があり、今月末まで参加者を募っている。(高橋 信)
きょう震災14年5カ月
シンガポール政府、同国赤十字社が創設した基金から7億円の寄付を受け、平成27年に開館した高田町の市コミュニティホール。玄関前のロータリーには友好の証しとして同国公認の高さ約2・5㍍のマーライオン像が立つ。
「シンガポールからの支援は、決して忘れてはならない」。
市と同国との関係構築などに尽力した市の村上清シニア国際連携アドバイザーが、像を見上げながらそう語った。村上アドバイザーが代表を務める旅行会社㈱陸前高田アメイジングトリップ・ビューロー(RTB)は市からの委託を受け、今回の派遣事業の企画・運営を担い、「ぜひ意欲のある人に訪問団メンバーとなってもらいたい」と呼びかける。
訪問日程は、10月8日(水)から12日(日)までの5日間。シンガポール政府、在シンガポール日本国大使館、同国赤十字社などを表敬訪問するほか、異文化共生のモデル地区とされる同国東部タンピネスを視察する。
参加費は、1人20万円(国内交通費や現地宿泊費など)。対象は市内に住む16歳以上で、今後同国との交流推進に関心があり、帰国後、訪問報告ができる人。今月20日(水)、22日(金)、24日(日)に高田町のRTB事務所でプログラムの説明会を開き、応募用紙を配る。
シンガポール政府は震災後、市民らが集い、交流する施設を失ったとの状況を市から知らされ、コミュニティホール建設費約14億円の半額を支援。このほか、夢アリーナたかた、市立図書館の設備導入も支援し、大学進学を目指す高校生らをサポートする寄付も行った。
一方、市は東京五輪・パラリンピックで、同国の「復興ありがとうホストタウン」「共生社会ホストタウン」になった。コミュニティホールのメインホールを「シンガポールホール」と名付け、令和3年には、支援への感謝と絆をさらに深め合うシンボルとして、施設前に政府公認のマーライオン像を建立した。芸術・産業分野などでの交流も続いている。
津波で壊滅的な被害を受けた同市では、1600億円超が投じられ、大規模なかさ上げや、高台宅地の造成を行う土地区画整理事業などが展開され、ハード面の復旧事業は5月の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」の開館をもって終了。市はこうした節目を踏まえ、シンガポールへの市民訪問団派遣を決めた。
村上アドバイザーは「行政だけでなく、市民が感謝を伝えるということが重要だと思っている。市も共生社会構築を推進しており、多文化共生の先進国から学びを得る機会にもしたい」と見据える。
説明会の時間は、20、22日が午後5時30分~7時、24日が午前10時30分~正午。
問い合わせは市交流推進課(℡54・2111内線411)、またはRTB(℡22・9105)へ。