あす鎮魂の三ノ戸剣舞奉納 40年以上前の盆行事を復活 陸前高田の保存会 移住者や大学生が助っ人協力(別写真あり)
令和7年8月13日付 7面

陸前高田市矢作町生出地区の三ノ戸剣舞保存会(鈴木英二会長)は14日(木)、同町の十三区公民館で三ノ戸剣舞を奉納し、先祖の霊を供養する。地元住民によると、三の戸地域ではお盆に合わせて家々を回り、剣舞を披露する回向が行われていたが、高齢化、人口減を背景に40年以上前に途絶えたという。同市への移住者や関東に住む大学生たちが不足する踊り手に加わったことで、長らく見送られた地域の盆行事が新たな形で復活することとなり、地元住民と助っ人の若者たちが力を合わせ、練習に打ち込んでいる。(高橋 信)

踊り手などとして加わるSETメンバー。練習を通じて住民と交流を深めている
今春から月1回のペースで始まった練習。10日夜は約20人が同公民館に集まり、2時間近く、笛や太鼓の音色に合わせた踊りを確認した。
練習には、市外出身の若者たちの姿も見られた。いずれも同市のNPO法人SET所属のメンバーで、人員不足の保存会に協力を申し出て、舞の習得に励んでいる。
芝浦工業大4年の山本晃裕さん(22)は毎月、居住地の埼玉県から陸前高田市まで自費で移動し、練習に参加。「こうして一緒に参加させていただき、地域のエネルギーを感じられる。本番は緊張するだろうが、一生懸命頑張りたい」と意気込む。
踊り手の中心的な役「ササラ」を務める地元の佐々木翼さん(33)は「地域の人たちにも見に来てほしい。郷土芸能は好きなので、次の世代にも伝わってほしい」と話した。
市無形民族文化財に指定されている三ノ戸剣舞。生出地区を代表する催しとして平成28年まで毎年開催された「おいで木炭まつり」などで披露され、旧矢作中では生徒の体験活動が行われ、継承されてきた。
しかし、高齢化、人口減に伴い、保存会の担い手は年々減少し、活動も縮小。住民によると、お盆の回向が行われたのは、少なくとも40年前にさかのぼるという。保存会は継承が途絶えることを危ぶみ、7年ほど前から練習を定期実施するなどしてきたが、新型コロナウイルス禍で密集の回避を余儀なくされ、活動は再び下火になっていた。
そうした中、SETのメンバーらが今春から加わることとなり、伝承に向けた練習を再開。今秋、予定する矢作町の天照御祖神社(佐々木美津子宮司)の式年大祭(五年祭)での奉納を目標に、月1回集まる中で、かつて行われていたお盆の回向行事復活の機運が高まり、急きょ実施を決めた。
14日は三の戸地域の家々を回らず、公民館に希望する世帯の位牌を置き、その前で剣舞を奉納する。時間は午前10時から。
鈴木会長(79)は「この先どうなるか分からない状況だった中、地元以外の若者たちが協力を申し出てくれて大変感謝している。定期的に集まり、活動すると自然と活気づくし、若い世代がいると刺激になる。14日は無事奉納できればいい」と話す。