「大船渡サーモン」普及拡大へ 盛川漁協 個別販売やふるさと納税で流通 来季は4000匹出荷見込む

▲ ブランド化に向けて各種取り組みが進められている盛川漁協の「大船渡サーモン」

 大船渡市の盛川漁業協同組合(佐藤由也組合長)は、猪川町内の養殖施設で育成し、ブランド化を目指しているトラウトサーモン「大船渡サーモン」の今季分の水揚げを終えた。漁協の経営状況を踏まえ、今年の出荷数は90匹にとどまったものの、常連客を中心とした個別販売や、ふるさと納税の返礼品として流通。国の補助金も活用しながら、来季出荷分の飼育が進められており、さらなる普及拡大とブランド化に向けた取り組みが注目される。(菅野弘大)


 同漁協は、県内でもいち早くトラウトサーモンの養殖に乗りだし、平成29年度から試験事業を実施。令和4年度からは、猪川町藤沢口地内に整備した直径15㍍の飼育池3基と同10㍍の1基を使い、そばを流れる大野川の水を使って育成している。
 昨年度には、試験養殖の結果や関係者らの声を踏まえ「大船渡サーモン」と改称。市の補助金も活用しながら、ブランド化を目指してロゴのステッカーやポスター、のぼり旗などの販促グッズも製作し、PRを続けてきた。約3000匹を水揚げし、定期的に市魚市場に出荷したほか、市産業まつりやおおふなと産直海鮮まつりなど地域のイベントにも出店し、「サーモン唐揚げ」や冷凍切り身を販売するなどして、認知度向上に努めた。
 漁協経営の状況から生産計画の見直しを図り、餌代の高騰などもあって、本年度の出荷数は90匹と少量だったが、注文状況に合わせて先月中旬から月・金曜日を中心に水揚げを行った。飼育池に入れる数が少なかった分、ストレスフリーでのびのびと育ち、1匹当たり3・6㌔~1・8㌔、平均約2㌔超えでの提供を実現。飼育池での餌の与え方にも工夫を凝らし、種類や期間に変化を加えたことで〝くさみがなく食べやすい〟サーモンに仕上がった。
 水揚げ直後にその場で血抜きをする工程も初めて取り入れた。一本丸ごとのほか、漁協職員がさばいた三枚下ろしの冷凍切り身を、常連客への個人販売とふるさと納税の返礼品で提供。淡水育成は脂のりがほど良く、焼き、揚げのほか、刺し身やカルパッチョなど、幅広い食べ方に活用できるといい「昨年よりさらにおいしい」との声もあった。
 サーモン担当の同漁協技術主任・千葉香織さんは「血抜きによって色や見た目が良いまま出荷できた。数は出せなかったが、徐々にリピーターも増えている。餌の与え方など、養殖のいろいろなやり方を試せたことも良かった」と手応えを語る。
 飼育池では、来年度に出荷する分の養殖が進められている。本年度は、持続可能な養殖経営の実現などを目指し、必要な経費を助成する国の「がんばる養殖復興支援事業」の補助を受け、予定では昨年度を上回る4000匹の出荷を見込んでいる。
 しかし、近年の異常気象が陸上養殖にも影響を及ぼし、関係者は小雨による渇水を懸念している。大野川から飼育池に引いている水の量も、目視で分かるほど少ない。
 千葉さんは「雨がなかなか降らず、来年の出荷に影響がないか心配している。ブランド化に向けた新たな販路開拓なども、水不足と合わせて課題だ」としながら、「まずは地元の人たちに大船渡サーモンを知ってもらい、少しずつでもなじんでいけば。ブランド化を目指してこれからも取り組みを進める」と見据える。