水辺生かした取り組み展開へ 国交省支援制度に登録 市のかわまちづくり計画

▲ かわまちづくりの対象地となる川原川公園

 陸前高田市が策定した陸前高田かわまちづくり計画が、国交省の支援制度に登録された。かわまちづくりは、河川とまちが融合した良好な空間を形成し、地域のにぎわい創出を目指す取り組み。制度登録は県内5カ所目で、気仙地区では初めて。市は県などと連携しながらハード・ソフト両面の施策を実施する考えで、東日本大震災の教訓伝承、まちの活性化に向け、主要河川の気仙川、川原川を活用した周遊ルートの形成、水上アクティビティーの場提供などを展開していく。(高橋 信)

 

中井次長㊥に要望書を手渡す佐々木市長㊨=国交省(陸前高田市提供)

 かわまちづくりは、河川管理用通路や親水護岸整備などの「ハード施策」と、河川の多様な利活用促進、イベント実施などの「ソフト施策」を展開することで、良好な空間形成を図る取り組みを指す。
 自治体や民間事業者、地域住民、河川管理者など、多様な主体が連携して取り組むことから、▽「かわ」と「まち」の新たな可能性(地域資源)の発見・発掘▽関係主体のネットワーク形成▽地域の課題解決──など、さまざまなメリットがあるとされる。
 陸前高田市は4月、かわまちづくり計画を策定。7月には国交省の支援制度登録を求め、佐々木拓市長、県の上澤和哉県土整備部長が同省を訪れ、県、市連名の要望書を、同省の中井淳一水管理・国土保全局次長に手渡した。
 同省は今月初旬、制度に新規登録した地域を発表。全国では新たに17カ所が加わり、全部で303カ所となった。県内では花巻地区と陸前高田市が登録され、5カ所となった。
 同市は、今泉地区と高田地区を分かつ清流・気仙川と、中心市街地を貫流する川原川を、かわまちづくりの実施箇所とする。
 計画によると▽「かわ」を生かしてめぐる▽「かわ」を生かして学ぶ・楽しむ・体験する▽かつての利用の復活と段階的な利活用の充実──の3点を基本方針に掲げる。
 高田松原津波復興祈念公園─中心市街地間の往来を促すため、川沿いの徒歩・自転車周遊ルートを形成する。レンタサイクルを増やすほか、自転車以外の移動手段として電動キックスケーターなどの導入を検討。環境に優しい電動バスのグリーンスローモビリティ「モビタ」の車両を追加導入する。
 アクティビティー関連では、気仙川、川原川河口部周辺でSUP(スタンドアップパドルボード、サップ)、カヤックガイドツアーの実施、SUPの大会誘致・開催、子どもやファミリー向けの釣り利用の推進などを展開する。
 川原川公園内などではバーベキューといった飲食イベントを開催。デジタル技術を駆使し、震災遺構や街並みなど震災前から現在までの経過が分かるようなコンテンツも整備する。
 同市では多くの観光客が、津波復興祈念公園を訪れているものの、大半が同園周辺を巡る短時間通過型の利用にとどまっており、被災地ツーリズムによらない持続可能な交流人口の確保が課題となっている。震災後の高台移転などの影響で、市民の足は祈念公園エリアから遠ざかっており、震災前の高田松原のような市民による日常的な利用も回復していない。
 こうした状況を踏まえ、市は地元で親しまれている河川特有の資源を生かしたまちづくりに取り組むこととし、計画を策定した。
 市土地活用推進課の佐藤賢課長補佐は「河川を生かした周遊ルートの形成をはじめとするハード、ソフト両面の施策を、引き続き、県などと一緒になり取り組んでいきたい」と話す。