山林再生 長期支援へ 「青葉組」が大船渡に新たな拠点開設 23日に綾里で個別相談会開催

▲ 被災現場での検討会に参加する中井代表取締役(左端)。長期的な視点での取り組みを見据える(7月)

 大船渡市大規模林野火災の森林再生事業に向け、地元外の民間企業が新たに大船渡に拠点を構え、長期的な視点で取り組む動きが出始めている。全国で森づくりの実績がある青葉組㈱(中井照大郎代表取締役、本社東京都)は、市内に出張所機能を設置。今月23日(土)には綾里地区公民館で山林所有者を対象に個別相談会を開催し、伐採や再造林、管理委託などのあり方をはじめ、持続可能な森づくりなどを提案することにしている。
 青葉組は令和2年にGREEN FORESTERSとして設立。カーボンオフセットをはじめ、民間企業と連携しながら落葉広葉樹を植栽するなど生物多様性に配慮した伐採跡地の造林・育林事業で知られ、今年公表された林野庁発行の6年度森林・林業白書でも事例紹介されている。
 新潟県では伐採後に再造林が行われない林業地で、民間企業と連携しながら「オニグルミの森」づくりを進めてきた。栃木県などでは企業から支援を受けながら、森林所有者の費用負担なしで伐採後の森づくりを起点とした森林の伐採・植林・育林体制を確立する取り組みを展開しており、大船渡が3拠点目となる。
 これまでの実績を生かし、大規模林野火災からの復旧・復興を進める中で苗木生産から植林、森林管理、木材活用までを一貫して担う造林専門事業を展開する方針。一般的な造林の流れに加え、低コストで自然に近い森に戻す場合は、植林せずに自然に生えてくる樹木を利用しての森林再生も検討する。
 全国的に、伐採後や植林後に何十年も放置される森林が増えているといわれる。山の将来像を描きながら森林再生事業を進め、定期的に現場の状況を判断して取り組みを見直すといった流れも見据える。
 大船渡町のキャッセン大船渡にある「OFUNATO DX_HUB(ディーエックスハブ)」に出張所を開設。来年春からは、新たな拠点を構えるなどして、造林事業などを展開する。
 23日の個別相談会は、林野火災で被災した山林所有者やその関係者が対象。時間は午前9時30分~正午で、 被災木の伐採や再造林、管理委託、買い取りなどの提案後に、個別相談会も開催する。
 相談費用は無料。固定資産税の課税明細書等、所有地番が分かるものがあれば持参する。特設サイト(別掲QRコード)で予約も受け付ける。
 市が今月開催した林地再生対策協議会では、市が実施する災害復旧事業区域を選定する流れが示された。被災森林の約50%に当たる約1700㌶の人工林から、条件に沿って事業適用区域を絞り込む。
 県の被害調査で「大(高さ2㍍以上の焼損)」「激(立木の全体・大部分が焼損)」の判定となり、居住地や大船渡湾、漁場、ダムなどの重要インフラといった保全対象を勘案しながら選定。面的な整備を重視し、5㌶以上のまとまった区域(複数の森林所有者であっても可)のうち、所有者の復旧意向を確認して森林災害復旧事業を導入する。
 事業規模が広大な面積となる中、森林再生にかかわるマンパワーや予算確保が課題として浮かび上がる。さらに長期的な視点での管理も求められ、環境保全といった意識にも目を向けながら、山林所有者や行政などと連携して現場作業にあたる事業体の重要性が増している。
 中井代表取締役(38)は「全国的にも山火事の発生が懸念される中、再生の手法や2次被害を出さない取り組みが注目されている。一つのモデルをつくる役割を担っていきたい。支援に意欲がある民間企業とのつながりも構築できれば」と話す。