三陸港まつり 節目の50回 亡き人へ祈りささげる 夏を彩る郷土芸能共演も
令和7年8月17日付 1面

大船渡市三陸町越喜来の越喜来漁港などで16日、第50回三陸港まつり(実行委員会主催)が開かれた。コロナ禍の影響で近年は縮小して実施していた灯籠行列も通常通りに行われ、住民らはそれぞれの先祖や東日本大震災で亡くなった人たちに向けて祈りをささげた。夜には、震災後の交流などで縁のある芸能団体を交えた郷土芸能共演も繰り広げられ、地元の復興への思いとともに夏を彩った。(齋藤 拓)
まつりは「未来は祭の輪の中にin三陸」をテーマに、浦浜念仏剣舞と金津流浦浜獅子躍の両保存会が共催。世代間の交流と地域住民のふるさとづくりに対する意識を高める機会とするほか、先祖や東日本大震災の犠牲者に対する鎮魂、復興への思いを込める場にもしている。
平成23年の震災によって、約90人が命を落とした越喜来地区。長らく同まつりのメイン会場となっていた同漁港も津波で被害を受け、同年以降は三陸公民館駐車場や旧越喜来中学校グラウンドなどを会場に開催してきた。
24年からは、首都圏の大学生や地元の高校生で構成する学生団体「Youthfor Ofunato(ユース・フォー・大船渡)」も準備や運営に協力。ペットボトルで作った灯籠で「三陸港まつり」の文字パネルを制作するなどして、住民らと交流を深めている。
30年には会場を再び同漁港に戻したが、令和2年はコロナ禍の影響で開催を断念。それでも住民らは同年、「お盆供養」として郷土芸能を奉納し、欠かさず故人をしのんできた。
雨天のため屋内で開かれた昨年とは打って変わり、今年は晴天の下での開催。模擬店が出店した交流広場は、多くの家族連れでにぎわいを見せた。
夕方からは円満寺の境内で郷土芸能を奉納し、灯籠行列がスタート。多くの参加者らが灯籠を手に同寺を出発し、越喜来漁港までの道のりを練り歩いた。
同漁港では供養塔と祭壇を前に「灯籠供養祭」が営まれ、震災と海難事故の犠牲者や各家庭の先祖の霊に向け、住民らが焼香。灯籠行列と供養祭は近年、コロナ禍や天候不良による規模の縮小が相次いだこともあり、参加者らは久々となる通常通りの慰霊行事にそれぞれ祈りをささげた。
その後、県内外の7団体による郷土芸能共演が始まった。今年は、コロナ禍以降は参加がかなわなかった県外の芸能団体も久々に参加。震災支援や越喜来との交流の縁から、埼玉県の「彩の獅子」と「神川豊穣太鼓」、韓国の新トブロン農楽団の合わせて3団体が駆けつけ、まつりの雰囲気に花を添えた。
越喜来からは浦浜念仏剣舞と金津流浦浜獅子躍の2団体が出演し、勇壮な舞を披露。集まった来場者らも拍手を送り、長年にわたって引き継がれてきた地元の芸能を楽しんでいた。