夏の〝フィナーレ〟にぎわい創出 盛川で伝統の灯ろう流し サン・リア屋上の「まつり」も好評(別写真あり)

▲ 近年は見送られていた「灯ろう流し」が復活

 大船渡市盛町の伝統行事「盛川灯ろう流し」は20日夜、同町の権現堂橋たもとで行われた。約400個のともしびが水面を照らし、川岸ではおたき上げの炎が立つ中、幅広い世代の住民らが足を運び、さまざまな思いを寄せた。フィナーレを飾る形で今年も花火が打ち上がったほか、サン・リア屋上駐車場で行われた盛青年商工会(千葉翔平会長)による「さかりグルメまつり」もにぎわいを見せた。(佐藤 壮)

 

グルメまつり開催でサン・リア屋上は花火鑑賞の〝特等席〟に

 灯ろう流しは吉野町公民館(鈴木仙三館長)が中心となって実施。旧暦で送り盆にあたる日に合わせて100年以上続くとされ、気仙の夏を締めくくる風物詩となっている。同地域の住民が中心となり、今年も、6、7の両日行われた盛町灯ろう七夕まつりへの参加と並行する形で準備や運営にあたってきた。
 近年は増水状態が続き、灯ろうは川岸に並べるまでにとどめていたが、今年は水流が穏やかな状況を受け、1個ずつ流された。おたき上げの炎が揺れる中、灯ろうはゆっくりと川下に流れながら水面を照らし、幻想的な光景が広がった。
 訪れた猪川町の千葉サツ子さん(89)は「来年は歩いて来れるか分からないので、頑張ってきた。毎年開いてくれて、ありがたい」と語り、灯ろうを静かに見つめていた。
 会場には、震災物故者の冥福を祈る木製の仏塔「三重の塔」を設置。静かに手を合わせ、鎮魂の祈りをささげる人々の姿が見られた。今年は長安寺太鼓による演奏が繰り広げられたほか、露店を楽しみに訪れる家族連れも多く、にぎわいが広がった。
 鈴木館長(72)は「灯ろうに手を合わせる方々の姿を見て、改めて皆さんの力で伝統行事を開催できて良かったと感じた」と話していた。
 一方、サン・リア屋上では、灯ろう流し後の花火大会に合わせて、盛青年商工会が「さかりグルメまつり」を開催。訪れた人々は、多彩な食や花火の臨場感を楽しんだ。
 同会は、商工業を営む有志らで構成。七夕まつり参画や花見の名所でもある天神山へのぼんぼり飾りなど、地域活性化への活動を重ねる。
 一昨年と昨年に、盛川で打ち上げられる花火に合わせ、未来を担う子どもたち向けに楽しい思い出をつくる場所を提供。好評を博したことから、今年もにぎわいを呼び込む屋上スペースの利活用策として企画した。会場にはぼんぼりを並べ、ビアガーデンに似た空間を整えた。
 地元の飲食店を中心に中華料理や鶏ハラミ焼き、焼き鳥などの販売テントが並んだほか、子どもが遊べるコーナーも。3年連続の開催とあって、花火が打ち上がる前から、楽しみにしていた幅広い世代の人々が詰めかけ、職場単位のグループで楽しむ光景も目立った。
 盛川から花火が打ち上がると、屋上に設けたいすやテーブルは〝特等席〟に。飲食を楽しみながら夜空を見上げ、行く夏を惜しむとともに、肩肘張らずにゆったりと過ごせる〝盛の夜〟を満喫した。