整備縮小に多様な意見 下水道計画見直し案巡り市議会全員協議会 来月下旬に対象地域向け説明会

▲ 公共下水道基本計画の見直し案を巡り意見が交わされた全員協議会

 大船渡市議会全員協議会が21日に開かれ、市当局がまとめた公共下水道基本計画の見直し案を巡り議論が交わされた。今後の新たな整備は立根、下船渡両分区のみとし、立根町の北側や猪川町の久名畑地域、末崎町の全域にあたる約1700世帯、100事業所の区域を計画から外し、100億円程度の投資抑制を見据える内容。議論では、見直しへの評価だけでなく、市民意見の反映を求める発言も出た。市は来月下旬、対象地域の住民を対象に説明会を開催する。(佐藤 壮)


 見直し案は、全体区域1137㌶のうち、事業計画区域をほぼそのまま残し、216㌶を削減した921㌶を新たな全体区域とするもの。
 現事業計画で管渠整備が未整備となっているのは、主に立根分区と下船渡分区で、事業費は25億5400万円。現行の基本計画で残る面積を全て事業化した場合は131億円が見込まれるが、今回の全体計画区域縮小で約100億円の整備投資を抑え、財政負担軽減を図る。
 計画区域の縮小により、末崎分区に加え、久名畑地域など猪川第三分区も全て計画から外れ、立根分区は北側が除外されることで約半分に。計画人口は1万9580人から1万840人に減少し、1日平均の計画汚水量も約4割少なくなる。大船渡町や赤崎町では、岸壁部分に当たる港湾地区も削除して計画全体を縮小する。
 市側は「下水道事業は投資経費が莫大であることから人口密度が低い自治体ほど投資効率が悪く、一般会計から多額の繰り入れを受けても経営に苦慮している。当市に限らず、全国的に計画縮小にかじを切る自治体は多くなっている」とし、理解を求めた。
 議員の一人は「大いなる評価をしている。費用対効果を考えればやむなしで、英断だった」と発言。一方で、計画から外れた地域の住民も「暮らして良かった」と感じられるような今後の施策展開を求めた。
 これに対し、渕上清市長は「合併処理浄化槽の敷設を推進する。住環境は多方面に及び、地域からの要望に対応し、住んで良かったと思える環境づくりは意識しないといけない」と述べた。
 合併処理浄化槽に関しては、現行の補助制度からの「かさ上げ」を求める質問も。市側は、すでに普及した世帯との公平性などから難色を示したものの「庁内横断的に検討したい」と答えた。
 また、計画から外れる対象地域の住民向けには、9月下旬に説明会を開催する見込みも示した。
 下水道料金は昨年4月の改定で、20立方㍍使用の場合、月額2750円から26・4%上昇し、3476円となった。別の議員は、厳しい運営状況を踏まえ、今後の料金改定の見通しをただした。
 市が策定した令和5~14年度を期間とする下水道事業経営戦略改訂版では、10年度、14年度に段階的に引き上げる流れが示されている。市側は策定当時からの情勢変化などを考慮し、10年度の前に経営に関するシミュレーションを行い、そのうえで判断したい考えを示した。
 別の議員からは「市民生活を守るという観点を第一に考えるべき。下水道だけでなく水道が来ていない地域もある。市民の意見を反映させることも重要ではないか」との発言も寄せられた。
 また、計画見直しに至った情勢変化も論戦となった。今野稔上下水道部長は「平成6年度に供用開始した当時は経営という概念はなく、いわゆる『公共事業』。その後、国から、公営企業に移行して独立採算制の経営形態を求める動きが出てきた。この間盛んに設備投資をして、113億円の企業債残高を抱える。当初から公営企業運営であれば、こうはならなかったと思うが、下水道事業者とすれば、毎年経営赤字を出している中で経営を無視できない判断になっている」などと説明した。
 全員協議会では質問が出なかったが、見直しでは整備投資効果を約100億円抑える内容となっており、市内では建設業における公共工事受注機会のさらなる縮小を懸念する声も聞かれる。市側は「見直しがなければ、さらなる料金値上げは避けられず、市民生活全体に影響が及ぶ」との見解を示す。